第597話カフェ・ルミエール文化講座開講記念コンサート(1)
晃の記念講座が、大好評のうちに終了し、次第により、開講記念コンサートになった。
しばらくの準備時間のあと、再びステージの幕があがると、カフェ・ルミエールの楽団と、ピアノが運び込まれている。
ここでも、司会は京極華蓮。
「それでは、開講記念コンサートをはじめたいと思います」
「まずは第一曲目はモーツァルトのピアノ協奏曲第21番」
「指揮は、当楽団の指揮者にして、当講座の講師でもあります榊原先生」
「そしてピアニストは、皆様ご存知の史君です」
聴講生全員からの万雷の拍手を受けて、指揮者の榊原と史が登場。
榊原と史が、客席に深くお辞儀をすると、また万雷の拍手が湧き上がる。
いつの間にか、ステージ袖口には、由紀と里奈も姿を見せている。
由紀
「アホの史が粗相をするかもしれないから心配なの」
華蓮
「そう?史君、落ちついているよ」
道彦
「スーツ姿も可愛いなあ、お人形さんみたいだ」
里奈は、胸が苦しいらしい。
手で押さえて全く声がでない。
ステージ袖口のそんな様子はともかく、モーツァルトのピアノ協奏曲の演奏がはじまった。
由紀
「・・・ったくピアノだけは上手、性格は意地悪で極悪」
華蓮
「それは言い過ぎ、演奏中にうるさい」
道彦
「なんともひきつけられるなあ・・・プロ以上って、別次元のモーツァルトだ」
里奈は、ハンカチを握りしめ、ただ立っているだけの状態。
ドキドキして仕方がないようだ。
ピアノ協奏曲の第二楽章まで進むと、ステージ袖口の面々は、言葉がない。
それでも、心で思うことはある。
由紀
「ピアノ弾いている顔は可愛いなあ、口を開くと憎らしいけれど」
華蓮
「これこそ、極上のモーツァルト、天使の音楽」
道彦
「このモーツァルトを聞くと、他の演奏家のは聴けないなあ」
「CDとかDVD、ネット配信すれば売れるかも」
里奈
「またこれで史君が人気出ちゃったらどうしよう、もっときれいな女性が史君に近づいたら不安」
第二楽章は聴講生全員を陶然とさせ、第三楽章は飛び跳ねるような明るい雰囲気。
史のピアノは、リズムのキレ、音の明るさ、全てが聴講生を魅了する。
また、指揮者の榊原も楽団も史の意図を察したのか、とにかく生き生きとリズム感を明確にして、モーツァルトの華やかさを際立たせる。
道彦が一言
「すっごいなあ・・・」
と漏らしただけ、圧倒的な史のピアノが輝いている。
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