第564話カフェ・ルミエール文化講座開講準備(1)

カフェ・ルミエールのビル2階や地下ホールなどで社会人講座を行う、「カフェ・ルミエール文化講座」の開講が迫ってきている。

事務局長の京極華蓮、事務局員の久我道彦、そして新たにスタッフに加わった立花亜美は、その準備に余念がない。


尚、開講する講座は以下の通りとなった。

・二階のフロア

源氏物語講座、万葉集講座、古今和歌集講座、新古今和歌集講座。

ギリシャ悲劇講座、古代ローマ史講座、ケルト民族歴史講座、フランス王朝史講座。

西洋料理講座、日本料理講座、食事の作法講座、和服の着付け講座。


・地下ホール

モーツァルトの室内楽を楽しむ講座、オペラの歴史講座。

ジャズを楽しむ講座、アメリカンポップスとヨーロッパポップスの比較講座。


・屋外

懇意の客の畑を借りての、農業実習講座。


華蓮が講座全部を網羅した資料を点検している。

「全て、50人の定員は埋まった」

「講師たちとの連絡も完璧」


久我道彦も、同じように資料を見ている。

「忙しくなるけれど、それはそれで楽しみ」

「行政とか関係機関との折衝もスムーズでした」

「期待値が高い講座になると思います」


立花亜美は、また別の資料を見ている。

「全ての受講者の受講料決済手続きも完了しています」

「それと全ての講座に関わる諸経費の決済システムも、完成しました」


華蓮は、その亜美の言葉がうれしいようだ。

「さすが、超一流商社の総務経理担当ですね、素晴らしく仕事が正確で速い」

「全て、任せられる感じです」

と言って、久我道彦をチラリと見てから

「それから、道彦君のことも、しっかりお願いします」

と、言うものだから、亜美は赤くなってしまった。


道彦も顔を赤くしていたけれど、話題を変えた。

「ところで、開講記念パーティーもあるんですよね」

「大旦那が、ご挨拶したいとか」


華蓮は、頷いた。

「それはそうだよね、ビルのオーナーで、今回の講座の発案者だから」

「また、ご立派なご挨拶をするのかなあ」

と、笑う。


亜美は、少し引き気味になった。

「え・・・あ・・・あのお方ですか?」

「近寄れない・・・身分が違いすぎ・・・」


三人が、そんな話をしていると、文化講座事務局のドアがノックされた。

華蓮は、誰かわかっていたらしい。

明るい声で

「はーい!入ってきて!」


入ってきたのは、史だった。

「おはようございます」

とキチンと頭を下げ、

「父から預かって来た源氏物語講座の初回資料です」

と、資料を華蓮に渡す。


華蓮が、ニコニコと

「ふふ、お待ちしていました、史君」

と資料を受け取ると、道彦も立ち上がった。

そして道彦は、亜美に史を紹介する。

「これが、史君、晃さんのご長男で、大旦那のお孫さん」

「華蓮さんとは、幼馴染」

「僕は、海外にほとんどだったから子供の頃は会っていないけれど」

「最近は、いろいろと話をしているよ」


史は、亜美の顔を見て

「初めまして、史です、華蓮さんはお姉さんみたいな感じ、道彦さんはお兄さんのような感じです」

「今後も、よろしくお願いします」

とキチンと頭を下げる。


亜美は、「え・・・可愛い・・・はぁ・・・美形そのもの」

と顔を赤くしながら、頭を下げる。


華蓮は、そんな亜美を見てクスクス笑う。

「ねえ、道彦君がお兄さんなんだから、やがては亜美さんもお姉さんになるんじゃない?可愛い弟ができるよ」


亜美の反応も速かった。

「わ!それ、最高!」


史は、そんな亜美をじっと見ている。


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