第519話華蓮と由紀と史(3)
史は、少し不機嫌。
「誰って・・・なんで姉貴にそこまで言わなければならないの?」
確かに、高校三年生にもなって、電話相手を姉に言うのも、史としては面倒なこと。
それでも、黙っていると、ますます由紀は、文句を言ってくると思ったらしい。
史は電話相手を正直に告げた。
「30分ぐらい前から、加奈子ちゃんと電話してた」
「かなり長い話だった」
由紀は、それでも怒った。
「どうして華蓮ちゃんが来るって言ったのに、上手に切れないの?」
「史のそういう優柔不断さが、いろんなトラブルを巻き起こすの!」
「だから、アホって、私に叱られるの」
由紀は、特に史に文句を言い出すと、全く止まらなくなる。
華蓮と母美智子は、互いに目くばせして、華蓮が割って入った。
華蓮
「そうじゃないの、由紀ちゃん、史君は何も悪くないの」
「私が史君たちの家に行くって言ったら、加奈子ちゃんが、どうしても史君とお話をしたいって言うから、私もいいよって言ったの、それが30分前なの」
すると史が、華蓮をじっと見た。
そして、史は華蓮に何か言いたいことがあるようだ。
「それでね、華蓮ちゃん、少し驚いたんだけど」
その史に、華蓮は、やさしい笑顔。
「なあに?史君、驚いたことって」
史は、母美智子の顔を少し見て、由紀は無視。
華蓮に話し始めた。
「あのさ、さっき聞いて驚いたんだけど、加奈子ちゃん、マジに都内の大学に決めたんだって、推薦でなんとなく決まっているみたい」
「それと、愛華ちゃんも、あと一歩みたいなんだって」
その史に、華蓮は、ニッコリ。
「うん、そうなの、それもあって、史君にも連絡したらって言ったの」
それを聞いた由紀は「え?」と、ポカンとした顔。
母美智子は、うれしそうな顔。
華蓮は、またニコニコと
「早く決めてもらって、文化講座構想のお手伝いもして欲しいしさ」
「もちろん、史君もだよ」
史も、その華蓮の言葉にうれしそうな顔。
ただ、由紀は、かなり気に入らない感じ。
「ねえ、私は?それに入らないの?仲間に入れないの?」
ほぼ黙っていた母美智子が、口を開いた。
「由紀ね、あなたは懐石の勉強があるんでしょ?清さんのお手伝いもするんでしょ?文化講座は、華蓮ちゃんと、加奈子ちゃん、愛華ちゃんと、史がいれば十分だもの」
「うっ」と口を閉ざした由紀に、史が一言。
「姉貴は、そういう細かい準備って無理、すぐに感情的になるし、周囲を混乱させるだけ」
やはり「史の一言」は、由紀には、「とんでもない言葉」だった。
「ポカリの手」が、史の頭上に伸びている。
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