第466話決着

マスターは、真顔に戻った。

「とにかく、史君への補償の問題については、竜の保険会社にも、やはりキチンとした対応をさせるし、竜と竜の親についても、ケジメをつけさせる」

「それから、その場所と日時については、俺が対応する」


史は、マスターの言葉に同意した。

「わかりました、父と母にも伝えます」

由紀も頷いた。

「こういうのは、あまり家族が口を挟むのも、どうかなあと思っていて、マスターにお願いするのが一番かなと」

頭を下げた。


マスターは、頷きスマホを手に取り、別室に行き、またすぐに戻って来た。

そして史と由紀に

「ああ、保険会社には連絡を取った、というかどやしつけた、実は知りあいなんだ」

と、クスッと笑う。


史と由紀が「え?」という顔をすると、

マスター

「ああ、俺の車の保険も同じ会社、というか大旦那も含めて、わが一族は同じ保険会社さ」

「史君の事故の話をしたら大慌てさ、すぐに社長自ら飛んで来るかもなあ」


史と由紀は、ますますキョトン顔。

マスターは、そんな史と由紀に真顔のまま

「どっちみち、大旦那と雅仁さん、晃さんも大株主さ」

「機嫌を損ねられたらとんでもないことになる」

「ああ、今はやりの、忖度とか、そういうのじゃないけれどさ、被害者としての正当な要求」

少し間をおいて、

「やはり、竜も竜の親も、一言も保険会社に何も連絡していなかったようだな」

と、難しい顔。


史は

「僕は、とにかく大人の人に相談するしかないと思って、まずマスターに相談したんだけど、すぐに対応してくれてうれしいです」

と、マスターに頭を下げる。


マスターは、まだ厳しい顔のまま、史と由紀に言い切った。

「ああ、晃さんでも、美智子さんでも、問題はないけれど、俺の方がいいな」

「そういうトラブルには、俺が強い」

「それから、謝罪に来ても、史君は許さないでいい、これは大旦那も含めて、わが一族の方針となった、つまり一族からの追放、何しろあまりにも無礼極まる」


マスターと史、由紀がそんな話をしていると、マスターの言葉通りに、さっそく保険会社の担当者と社長から連絡が入り、出向いて来た。

そして、マスターも同行して、音大前の現場検証や史の家まで出向いて史の壊されたジャケットの写真撮影などや、示談書、保険金の提示などの手続きが速やかに進んだ。


また、後日、警察から釈放された竜と竜の親も、史の自宅に謝罪に来た。

史は、父晃と母美智子の同席のもと、竜の平身低頭、涙ながらの謝罪を聞くだけ、厳しい表情を崩さなかった。


そして、竜と竜の家族は、その日の時点で、一族から完全に追放となった。





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