第329話マスターと由紀の横浜デート(1)

さて、クリスマスコンサートは、昨晩、無事終了した。

由紀は、史と愛華のことを、様々不安に思うけれど、今日はマスターと横浜デートの日、かなりウキウキしてマスターの到着を待つ。


午前九時の約束通り、マスターが家のチャイムを鳴らした。

「はーい!」

いつもは、応対など全て母任せであるけれど、今日は由紀が待ち構えていたリビングから飛び出すように、玄関を開ける。


そんな由紀を見てマスター

「ああ、由紀ちゃん、昨日はお疲れさん」

由紀も

「いえいえ、なんとかできました、お料理も美味しかった」

と、頭を下げる。

母美智子も、玄関に出てきた。

「ねえ、あがってお茶でも」

と声をかけるので、マスターも「遠慮なく」と、リビングにあがる。


珍しく由紀が、お茶を入れていると

マスターが

「あれ?史君は?」

と尋ねると、美智子は首を横に振る。

「あのね、史、家に帰ってから熱出して寝込んでいる」

「咳とクシャミも出て、熱は39度ある」


由紀がお茶を入れて持ってきた。

「ねえ、史は本当に弱虫」

「だから、当分寝かせます」

「そもそもフラフラして、立てない」


マスターは、少し心配そうな顔になるけれど、これでは史の顔を見ることも出来ない。

「じゃあ、少し史君とも話したかったけれど」

「そろそろ出発しよう」

と、由紀に声をかける。


由紀も

「はい!よろしく!」

と、マスターと一緒に玄関を出る。


そして、マスターの車を見て、大騒ぎ。

「わーーー!BMWの新車?」

「かっこいい!」

「きゃーーーー!こんなスッゴイ車に乗れるの?」

「お洒落だなあ、さすがマスター!」


マスターはとにかく由紀が大騒ぎなので、笑ってしまう。

そして、由紀を助手席に乗せて、出発した。


車中での由紀は、「史はともかく、今日は私が主役」なので、顔も明るい。

しかし、由紀にはそれでも、気にかかっていることがあった。

そして、そのことをマスターに聞く。

「ねえ、マスター、ところで横浜ではお食事だけなの?」


するとマスター

「えーっと、お食事もするけれどさ」

「由紀ちゃんのドレスをね」

マスターから、「え?」という答えが返ってきた。


由紀は

「ドレス?どうして?」

つい聞き返す。


マスターは、少し真面目な顔になっている。

そして由紀に

「あのね、由紀ちゃん、司会者のアシスタントをしてもらおうかと思ってさ」

「全部ではなけれどね、由紀ちゃんと加奈子ちゃんと愛華ちゃんも、交代でさ」


由紀は

「・・・え?」

と途端に緊張顔になる。


そんな由紀にマスターは続けた。

「史君がメインの司会者になってもらう予定、少しだけ話したけれど」


由紀は、緊張顔から途端に不安顔になった。

そして

「ねえ、マスター、わかったけれど、史と愛華ちゃんの組み合わせだけはやめて」

と、マスターにお願いをする。


マスター

「え?」

今度は、マスターが由紀に聞き返している。

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