第283話史の京都散歩(6)

またしても手を握られてしまった史、顔が赤くなる。

それでも必死に

「ねえ、加奈子ちゃん、これからの予定は?」

と聞くと


加奈子

「あらあら、顔が真っ赤やん、可愛いなあ」

とクスッと笑う。

それでも、史の必死顔を見て

「えーっとな、これから、母さんも連れて、史君が今回泊まる孝おじさまのお屋敷に寄って、それから愛華ちゃんのお屋敷に行くよ」

「楽譜は、孝おじさまのお屋敷にある」

「ピアノもあるから、練習はそこで」

と、ようやく具体的な予定を言ってきた。


その後は、少しお茶を飲んで昔話をした後、黒ベンツに乗って全員で、練習場所でもある、孝のお屋敷に。

事前の連絡も、完璧だったようだ。

黒ベンツが、お屋敷につくと、孝とその妻、彰子がお出迎え。


「ああ、史君!わざわざありがとう」

しっかり手を握ってくる。

彰子は

「まあ、史君!懐かしいなあ、大きくなって!」

「可愛いなあ、晃さんの若い頃のそっくりやわ」

「もてるやろ?こんなお人形様みたいな顔をして」

「もう、美智子さんがうらやましいわ」

「ほんま、引き取ってここで暮らして欲しいなあ」

・・・・と大感激の様子・・・話が途切れない。


史は

「はい、本当にいろいろとありがとうございました」

とキチンと頭を下げる。

その意味は、以前の芸能スカウトの一件である。


その話については、加奈子、圭子、愛華も知っているらしい。

加奈子

「とにかく無事でよかったなあ」

圭子

「ほんまや、あの連中って何をするかわからんから」

愛華も、真面目顔で頷いている。


さて、そんな話をしながら、史は孝のお屋敷に入った。

孝のお屋敷であるから、大旦那のお屋敷でもあるし、晃や圭子にとっては実家になる。


史は

「わぁ、懐かしいなあ」

「今晩、お世話になります」

と、ここでも頭を下げる。


孝は

「ああ、ゆっくり休んで欲しい」

「その前が、パーティーの演奏だしね」

「実家と思っていいよ」

と言って彰子に目配せ。


彰子もすぐに

「はい、二階の晃さんが使っていたお部屋を用意したよ」

「史君が泊まってくれるって言うから、ベッドも新調」

と言ってきた。


史は

「え・・・そんな・・・」

と言いながらも

「はい、ありがとうございます」

と頭を下げる。


加奈子は

「ねえ、彰子おばさん、荷物とかあるから」

と話を振ると


彰子

「そうやねえ、じゃあ、先に」

と、史を促している。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る