第270話VS芸能スカウト(10)

さて、マスターは、地域住民からもたらされた芸能スカウト杉本の情報と、学園校門前の録画ビデオを携え、大旦那のお屋敷に出向き、相談をかけることした。

そのマスターには自治会長の橋本と産直市の会長の大石も同行した。

橋本も大石も最初は「・・・旧摂関家・・・大旦那のお屋敷なんて、恐れ多い・・・」と最初は遠慮したけれど、マスターが「心配いらない、器量が大きなお方だから」と説得し、同行となったのである。


さて、大旦那のお屋敷に入り、マスターが自治会長の橋本と産直市会長の大石を紹介すると

大旦那

「いやいや、本当にご苦労様です」

「孫の史の一家やマスターの・・・もう一家だな、本当にお世話になっております」

「それからカフェ・ルミエールへのご愛顧、感謝してもしきれません」

と、深く頭を下げる。


それには橋本も大石も

「うわ・・・すごい・・・こんな立派な人に頭を下げられるなんて」

「でも、確かに大きくて深い器量だ、包まれてしまう」

最初の挨拶から、大旦那には魅入られている。


奥様も出てきた。

「家内でございます」

「このたびは、ご迷惑をおかけいたしまして」

と、これまた丁寧に頭を下げる。


「粗茶でも」

とお手伝いのものに運ばせた緑茶も


橋本

「すっごい、玉露だ」

大石

「うーーー・・・栽培から蒸らしから、淹れ方まで絶品」

と、ほぼ感激状態。


しかし、そんなことを感じている場合ではない。

マスターは、橋本と大石の状態には構わず、大旦那と奥様に「事の次第」を一部始終説明をする。

校長から預かったきた校門前のビデオの再生、警察の対応の様子、地域情報も含めて、事実に基づいた説明をする。


全てを聞き終わった大旦那

「まずは地域の橋本自治会長様と大石産直市会長様には、これほどの貴重な情報を集めていただき、心より感謝申し上げます」

と、橋本と大石に頭を下げた。

そして


大旦那

「ああ、後は私に任せてください」

「地域の警察と芸能プロダクションとスカウトには、手を出さないでください」


マスターはもう一言あるようだ。

「万が一のためのマスコミ対策も」

と大旦那の顔を見ると


大旦那

「ああ、それはもちろん」

少し笑って

「ふふ、ギャフンと言わせてやる」


あっけにとられる橋本と大石であるけれど、奥様とマスターはクスクスと笑っている。


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