第263話vs芸能スカウト(3)

しかし、芸能スカウトは、史の次の音大練習を待つことはなかった。

史の下校時間を調べていたのか、校門の前で待っていたのである。


そして早速声をかけてくる。

「ねえ、君が史君?かっこいいねえ」

「いや、可愛いねえ!」

とにかく、「ナヨナヨ系」気持の悪い話し方。

服装は、ピンクのジャケットスーツに赤いシャツ。

髪はおそらくパーマをかけ、完全な金髪にしている。

サングラスをかけ、耳にはピアスをした、二十代後半の男である。

そして、それ以上に気分が悪くなるような、甘ったるい香水をつけている。


史は

「はい、史ですが」

「私の名前を言う前に、あなたが名乗るのがスジなのでは」

とキリッと答える。


すると、その男は

「いやーーーー」

「その言い方もいいねえ」

「その表情も、すっばらしい!」

「ああ、僕はねえ。みんな知っているでしょ?」

「例のJがつく芸能プロダクションのスカウトなんだ」

「ああ、杉本って言うんだ」

「これから長い付き合いになるから、よーく覚えてね」

とにかくナレナレしい。



史は

「僕は、そういうの全く興味がありませんので、お引き取りください」

「先を急ぐので」

と歩き出そうとする。


しかし、さすがに超有名Jのつく芸能プロダクションのスカウトである。

簡単には引き下がらない。

杉本

「えーーーー?」

「帰っちゃ困るなあ」

「少しは僕の話を聞いてくれないとさあ」

「いいかい?僕達のプロダクションは、入りたいって人が、もうね超殺到しているの、それをわざわざ、忙しい時間をさいて来ているんだからさ」

「だから、そんな寂しいことを言わないでよ」

そこまで言って、スッと史の腕を掴もうとする。


「そんなこと言われても、僕には関係ないですから」

杉本スカウトから、さっと身をかわす。


すると杉本

「えーーーー?」

「芸能プロダクションのJだよ?」

「そんなことをしていいの?」

今度は大声をあげだした。


いつの間にか、校門周辺に、学生や教師たちが集まってきている。

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