第229話悩みこむ史(8)

校長は、稲葉顧問への追及をさらに続けた。

「稲葉顧問、君がどう言おうと史君が書く文章は優れている」

「君だって史君の書く文章を認めているから、史君に大量、ほぼ過半数も書かせたんだろ?」

「でもな、それは新聞部の顧問としてどうなんだ」

「教師の役目は、生徒を育てることだろ?」

「それを君はなんだ!その役目をほったらかしにして、ほぼイジメのようなことを史君に続けたのではないのか?」

「それに何の意味があるんだ!」

「何のために、そこまで史君と史君の御父君にまでケチをつけるんだ!」

「おまけに、オチャラケ楽団?」

「君は何の資格があって、そんなことを言えるのか!」

「いいか!史君にしろ、史君の御父上にしろ、カフェ・ルミエールの楽団も含めて評価はすこぶる高い」

「稲葉顧問、君にはそういう高い評価を得たことがあるのか!」

「私が知る限り、そんな評価を受けたという話は一度も聞いたことがない」

校長は、ここで一呼吸した。

そして

「それどころか、イジメ続けた上に、将来がある史君の手首に怪我を負わせて、自分に責任がない?」


稲葉顧問は、本当に真っ青、ガタガタ震えている。

校長の顔はさらに厳しい。

「稲葉顧問!」

「結局君は、記事はほとんど史君任せ」

「他の部員には何の指導もせず、文句だけを言い」

「史君がおとなしくて真面目だから、それにつけこんでイジメていただけだろう!」

「そして・・・その理由は・・・ここまで言ったから私も本音を言わせてもらう」

校長が声を低くすると、稲葉顧問の身体がブルっと震えた。


校長

「史君の才能に嫉妬したんだろう!」

「それだけで、こんなことをしでかした!」

「お前はガキか!」

「新聞部員に詰め寄られただけで、頭に血が昇って、そのうえ、かばおうとした史君を払い除けて、その両手首を踏みつけるなんて!」

「教育者の前に、人間として失格だ!」


校長の、最後の言葉に、稲葉顧問は全く反論が出来なかった。


校長は稲葉顧問に校長に出来うる懲戒処分として、三日間の自宅謹慎を指示した。

その間に、学園の緊急理事会が開催され、稲葉顧問の懲戒解雇が決定した。

理事の中には、警察に通報する意見もあったけれど、「被害者」の史が「少し考えさせて欲しい」と言ったので、保留になっている。

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