第218話秋の演奏会に向けて(3)

史は、カフェ・ルミエール楽団の秋の演奏会で、ピアノ協奏曲を弾くことは、OKした。

となると、後はその曲の選定となる。

カフェ・ルミエールに集まった三人の大先生やマスターからは

「史君の弾きたい曲でいいよ」という話になったので、帰り道でいろいろ考える。

一緒に帰り道を歩く由紀も、史の弾く曲には興味があるようだ。


由紀

「ねえ、史、ベートーヴェンにするの?」

「それとも、モーツァルト?」

など、いろいろ聞いてくる。


史は

「うーん・・・イマイチ、イメージが合わない」

「大きな曲の前に・・・」

「ピシッと決まっていて、典雅で、そういう曲かなあ」

「楽団も演奏しやすい曲がいいな」

「それでいて、あまり聞かれない曲」

史も、いろいろ考えているようだ。


由紀は

「いろいろ探さないとね」

史も

「うん、なんとなくイメージはあるよ」

由紀

「え?どんなの?」

「バッハを弾きたいなあと、まだなんとなく程度だけど」

由紀

「え・・・地味じゃない?」

少し首をかしげる。

「いや、全然、そんなことない、弾き方とかテンポで変わる」


由紀も、史の言葉で少し考える。

「うーん・・・それはそうかなあ・・・」

「面白いかなあ」

由紀にも、イメージが浮かんだようだ。


史は

「そうなると楽譜が欲しいなあ」

由紀

「音大の先生には言わないほうがいいかも」

「うん、やだ、行くとジロジロ見てくる人ばかりで」

由紀

「そうなると、これから銀座に行こうか?」

「うん、付き合って」


何故か、今日の由紀と史は気が合っている。

それも、由紀の推薦入学が決まったことが一つの理由らしい。

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