第208話玉鬘講義(2)

マスターと美智子は、休憩時間中の軽食を作るため、キッチンに入った。

飲み物については、洋子、奈津美、結衣、彩、美幸が手分けをして、配っている。


さて、「玉鬘のお話」開始時間となった。

晃と史が満員の客からの拍手の中、ステージにのぼる。


「本日は、これほど多くのお客様に、玉鬘のお話をさせていただきます」

「短い時間なので、どこまでお話できるか、難しいところがありますが、出来る限りわかりやすくお話をさせていただきます」

やはり丁寧に、頭を下げ、史もそれにならい、丁寧に頭を下げる。


晃は史に目配せする。

そして、史がPCを操作すると、まず家系図のようなものが大写しになった。


晃は

「はい、玉鬘のお話をする前に、家系図にて関係を確認しようと思います」

「まず、玉鬘の母は夕顔、父は頭の中将となります」

「夕顔の母については、あまり詳しくはかかれていなくて、父は三位中将ですが故人、もう世間的には評価がほとんどない状態ですが、一応の所領はあり、夕顔にも何人か仕えておりました」

「父の頭の中将については、ご存知源氏のライバルです」

「天下の重鎮である左大臣家の跡取り、右大臣家の四ノ宮と結婚」

「また源氏の正妻葵の上の兄になりますが」

晃の説明に合わせて、史が家系図のところに、PCのポインタを合わせていく。

客たちも、ふむふむと聞いている。


晃は説明を続ける。

「それで、夕顔は本来は、この頭の中将の愛人、といっても愛人の中の一人です」

「女の子は、つまり後の玉鬘になるのですが、源氏が夕顔のところに通いだしたころには、既に生まれていました」

「源氏としては、その人妻を寝取ってしまったということになります」

「そして、幽霊屋敷のようなところに連れだして、情事・・・そこで事件が発生」

「夕顔は、何らかの霊に取り憑かれて、いきなり死んでしまうのです」

晃はここで一呼吸を置く。

客たちも、一呼吸をして、飲み物を口につける。


晃は、少し笑い、話を続ける。

「それで、この夕顔に取りついた霊は、古来様々言われてきたけれど」

「多くの人が勘違いするのは、これが生霊であって、六条御息所の生霊とすること」

「夕顔が出て来る文の中に、六条御息所の話がたくさん出てくるので、そう思うのかもしれませんが」

晃の話で、客の目の色が変わっている。

晃は

「まず、この霊は、六条御息所の霊とは一言も書かれていません」

「そして、何故そうなのか、その当時の男女関係を知る上で、大変重要なポイントがここにあります」

客の目は、ますます晃にひきつけられていく。


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