第77話奈津美の悩み(4)
史も由紀も次のケーキ、モンブランに進んだ。
奈津美も洋子も全く形は同じである。
「うん、ここでもはっきりする」
史は、「違い」に確信を持ったのか、深めに頷いた。
由紀は、奈津美のモンブランと洋子のモンブランを、交互に食べている。
「そうか、おこがましい話なんだけれど」
フンフンと頷いている。
最後のケーキのイチジクのタルトは、タルト生地の上にアーモンドクリームを詰め、その上に皮を剥いたイチジクをカットして焼き上げたもの。
「これだと、あまり違いがわからない」史
「どっしりとした感じは、奈津美さんかなあ」由紀
そんなことを言って、三種類のケーキを食べ終えた。
「それで、どういう違い?」
洋子は、史と由紀の顔を見た。
奈津美は不安げな顔になっている。
「こういう言い方が、あっているかどうかなんですが」
史の顔は、真面目な顔になった。
「あの、シュークリームとモンブランでわかったんですが」
「口どけが、洋子さんのは軽みがあって、舌の上で華が開くような幸せを感じます」
「奈津美さんのは、少し重ためで、美味しいけれど、どっしりというか、濃厚な感じです」
「最後の焼きタルトになると、ほとんど同じです」
由紀も続いた。
「私も史と全く同じ」
「奈津美さんのクリームとか、モンブランがどっしり系なのは・・・」
由紀は、奈津美に頭を下げた。
「おそらく、木村和菓子店の味というか、そのどっしり系の味がしみ込んでいるのかなあと」
「最後のタルトは、全くと言っていいほど、同じです」
「・・・さすが、美智子さんの子だ」
二人の感想を聞いて、洋子は舌を巻いた。
「うん、そうなると、クリームの泡立てかなあ」
奈津美は、素直にメモを取り、考えはじめた。
「うん、奈津美さんは、丁寧だから、少しやりすぎかも」
「間違いではないけれどね」
洋子は、奈津美の肩をポンと叩いた。
そして、結衣に声をかけた。
「冷蔵庫から、出してきて」
結衣は、すぐに持ってきた。
紙袋を開けると、シュークリームが出てきた。
「うん、これが伝説の職人美智子さんのシュークリームだよ、食べてみて」
洋子は、まず奈津美にシュークリームを渡す。
「うわ!何?これ・・・」
奈津美は、その目を丸くしている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます