第34話史の柔道(5)
史が肩を落として本当に沈み込んでしまった姿を見て、学園長、担任の三輪、柔道部の佐野顧問までが、慌ててしまった。
「いや、史君が責任を感じる必要はない」学園長
「史君、何も悪いことしていないじゃない、そんなに自分を責めちゃだめだよ」三輪
「いや、才能を感じたから史君を誘って来たんだから」佐野顧問
しかし、史はどんなことを言われても、落ち込んだままだった。
そんな状態なので、史に対する、それ以上の事情聴取は無理だった。
三輪担任は、史を一旦、クラスに戻した。
そして、学園長室で、補償問題等の打ち合わせをすることになった。
史は一日中、落ち込んだままだった。
その顔のあまりの暗さゆえ、誰も声をかけることが出来ない。
持ってきたお弁当も、半分程度しか食べない。
授業だけは、いつもの通り、真面目に聞いているものの、その落ち込んだ顔は変わらない。
放課後になっても、顔は暗いまま、そのまま松葉杖をついて帰宅してしまった。
そんな史を見守るしかできなかったクラスの生徒たちも、困惑している。
いろんな話をしている。
「ねえ、史君、足首の怪我は自分が悪いっていったらしいよ」
「え?何で、あれは治樹がわざと蹴ったんでしょ?」
「でも、史君は自分がノロマだったからかわせなかったって、治樹とか柔道部顧問のせいじゃないって言ったらしい」
「そんなこと考えてたの?それは自分を責めすぎだよ」
「あの交通事故以来、いろいろあったからね」
「交通事故の怪我だって、自分が悪いって思い込みかねないなあ」
そんな困惑している生徒たちに、新たな情報が飛び込んで来た。
「ねえ、昼間ね、私の母さんが、治樹をゲーセンに入るところを見たんだって、今日は学校休みだったのって聞いてきたから、違うっていったんだけど」
「え?風邪で休んだんじゃないの?」
「・・・でも、治樹ならありえるなあ」
「どうせ、今日登校すれば、大事になって叱られることがわかっている」
「ああ、それで仮病で今日は休むと」
「その間に佐野顧問が何とかゴマカスと思っているのかな」
「でもさ、史君の怪我はゴマカスなんてできるの?」
「ああ、授業中の事故だから、責任は学校になる、治樹は多少叱られるだけと思っているくらいさ」
「それで、少し間を置いて、ホトボリがさめたら出て来るのか」
「・・・何か・・・ずるいっていうか、卑怯っていうか・・・小細工っていうか・・・」
クラスの中で、そんな話をしていると、また新たな情報が飛び込んで来た。
「ねえ、野球部の良夫さんと、柔道部の美佳先輩が、治樹君を捕まえたらしい」
「今、柔道場に、引きずり込んだって」
「レスリング部とか他の格闘系のお姉さんたちも柔道場に集まっているって」
「行かなきゃ!」
クラス全員が柔道場に向かうことになった。
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