第21話榊原とマスター、涼子
「いや、本当に助かりました、何から何まで」
マスターは、榊原の前に、水割りを置いた。
BGMはしっとりとしたジャズピアノが流れている。
「いや、そんな水臭いこと言わなくていいさ、こっちもうれしいのさ」
榊原も、うれしそうな顔になる。
「本当に二つ返事で、さすがですねえ」
涼子は、榊原の前にお通しのチョコレートとフレッシュバターピーナッツを置く。
「でも、懐かしくてさ、こうやってマスターと涼子さんと仕事ができるなんて」
榊原は、フレッシュバターピーナッツが本当に美味しそうである。
「そうですねえ、オーケストラを辞めてからも、指揮者として凄いご活躍の中で、ホテルのパブでヴァイオリンでジャズもねえ、上手でしたね」マスター
「ああ、毎日クラシックの指揮ばかりだと、飽きるのさ、時折ジャズを目一杯やらせてもらってどれだけ助かったことか」榊原
「あくまでも、仕事じゃない音楽もしたかったんですね」涼子
「そうだねえ、仕事にすると音楽は面白くないね」榊原
「私も、半分以上は趣味でこの仕事してますよ」マスター
「私は、マスターのお世話をするのが趣味かなあ」涼子
「・・・そうだねえ・・・昔から妬けたねえ・・・」榊原
「奥さんに電話しましょうか?」涼子
「そうだねえ・・・それも・・・」マスター
「おいおい・・・」
榊原は少し焦った顔になる。
「ああ、奥さんのフルートも聞きたいなあってね」マスター
「それと、煮物を教わりたいなあって」涼子
「・・・全くこの夫婦にはかなわない」榊原
三人の会話は閉店まで続いた。
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