第7話『ダイハード』
コンマ001
閃光と爆轟。
音速超過で膨張する、破壊的な大気流動。
それに引き込まれ、殺到する破片や地面の圧倒的質量が、機体を飲み込む。
だが、電荷を持っている限り電磁障壁を越えることは不可能である。
そして、障壁の電磁制御が、流動する大質量のベクトルを細分化、衝撃の大半を直撃コースから受け流し、捌き切る。
激動。
「緊急事態! 電脳網超過駆動、全開っ!」
ブシューーーーッ! キュゥイーーーーーーン!!
電子繊維網に強制冷却触媒~アイスノン~をぶち込み物理的に頭を冷やす。
そうして得られた熱容量で思考速度をオーバークロック。処理速度の限界を一時的に超える。
通常の思考速度では自体に追いつかない場合に行う超思考状態。
電子繊維網の負荷が限界を超えるまで体感で10分、実時間で5秒の間、思考が超高速化される。
発動の合間。
生死の境。
何故かふと雑多な記憶のメモリーを思い出す。
教官:
『
電磁障壁の直接的な弱点は3つである。
1つ目はレーザー。
これは光の速さで殺到する上、当然電荷を持たないからである。
2つ目は物質でも電荷がないもの(見かけ上を含む)。
中性子もそうだが、実際問題になるのは無極性分子である。電荷が『見かけ上』中庸に保たれた物質で、外から加えられた電磁力に対し、僅かな反応しか示さないため電磁障壁が有効に働かない。
3つ目は高速巨大質量。
これは単純。素直に電磁障壁の出力限界である。飛来する巨大質量は、電磁障壁を踏み超えることがある。
現在の戦場での徹甲弾は、高速であるものの質量は小さく弾きやすい。
他に比較的質量の大きい砲弾・噴進弾は爆裂・散弾・プラズマであり、爆裂・散弾・プラズマのような『速度はあるが細かい質量の集まり』であるなら、---対艦クラスの大型弾頭でない限りは---電磁障壁で破片を分散させて捌ききれる。
まあ直撃した場合は・・・衝撃をもろに被った機体が保つかは分からんがな。
』
コンマ003
秘密---にしておきたいの---ではあるが。
機体用の電磁障壁発生装置はごく最近に小型高出力化が進んだため、殆ど目立った対策がなされていない。
RBYF-19Eに積まれているものも、実験機を除いてまだ二世代目である。
だが、航宙艦船には隕石避け兼防御用に普通に搭載されており、対艦用弾頭の中には電磁障壁に干渉し難い無極性分子で作られた『EBP弾頭』---電磁障壁貫通弾---が存在している。
そのため機体用電磁障壁の存在が公になれば、早晩にでも戦場を彩る弾幕の中にEBP弾が混じることは確定的であり、機体の未来は結構暗い。
コンマ004
(だからといってこんな爆圧捌ききれるかーーーーっ! )
バヂィバヂバヂバヂバヂ!!
パワータイプの地雷は爆圧の効果を上げるため一定の高度まで飛び上がる。
そのため機体は爆発を真横から食らい、木々を薙ぎ倒し地面で弾かれて跳ね跳び森をライナー気味に削っていく。
姿勢制御!
ジャイロ・光学制御・レーザー測位・電波測位・・・
-error error error-
不随意に音速超過した機体は、とんでもない衝撃とともに超回転を起こしている。
姿勢制御機構~さんはんきかん~の8割5分ほどが爆轟と大回転と閃光の余波で混乱、及び沈黙していた。
(スタビライザー・・・・・・が戻らない!! 耐熱装甲・・・・・・が燃えたぁっ!?)
事態発生から早0.007秒。
同時に発生した”爆発熱”の処理の方もクソ不味い事態に陥っていた。
爆薬は元来、燃焼すると音速超過で膨張する。まあつまり”爆発的に膨張する大気”が爆発である。
だが爆圧や破片は、電力の続く限りは電磁障壁で弾いたり受け流すことはできる。
が。
『発生した熱(線)は電磁障壁をすり抜ける』
大まかにいえば熱は光線であり、電磁障壁は電荷を持たない光線を防げない。
それらが裏目に出た。
地雷から発生した”熱線”は電磁障壁内部でコーティングと装甲材に絡みつき”電子と原子核が遊離した状態”いわゆるプラズマへと相変化を起こし、プラズマは”電荷を持った物質”のため、電磁障壁内部に封じ込められる。
地面との接触で電磁障壁を解除できない今、電磁障壁内部でプラズマが機体を侵食し始める。
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