キノコ100%ジュース

私は登山が趣味だ。

更に山の幸も好きだ。


日頃は裁判官なんて固い仕事をしているからこそ、趣味の時間は大切だ。


今は秋。


キノコが一番美味しくなる季節。


それも楽しみに山登りをしている。


色とりどりのキノコをいくつか採取した。


それを持ち込んだ鍋で煮る。

味噌で味付けする。


なんとも美味いキノコの味噌汁。


今日はここに泊まるべく、テントも用意したが1つ忘れてしまった。


酒とか…茶とかでも良い。

水意外の飲み物が欲しい。


ちょっと行った所に自販機が設置されていたなぁ。

暗くなる前に行ってみるか。


少し戻ると地味な自販機があった。


山の色に調和させる為なのか、茶色1色の自販機。

山の雰囲気に合っている。


しかし…ラインナップが酷い。


「水」だらけ。


「水」意外にある唯一の飲み物がキノコ100%ジュース!!


有り得ないだろう。


確かにキノコは好きだ。

しかしジュースとなれば話は別。


明らかにジュース向きの味わいでないのは、誰にでも解ろうものだ。


だが、同時に気になるのも事実。


どんな味なのだろう。


…買うか。

せっかく来たんだし。


缶にはこう、書いてある。


「季節に応じたキノコを配合!」


秋に買えただけマシか。


テントに戻り、恐る恐る一口、飲んでみた…


口に広がるキノコ特有の匂いとヌルヌルした舌触り。


味は…たぶん、キノコ味。

調味料等が使われた形跡は無い。


!!


不味いっ!

だが、出汁にすれば美味いか?


味噌汁に混ぜ味噌を足し。


飲んでみると…

味わいが深まった気はする。


だが、その後。


悪寒がしてきた。風邪か?

腹も痛くなってきた。吐き気も…


生のキノコジュースなんか飲んだからかもしれない。

キノコは基本、生で食わない。


吐いて出せば収まるだろう。


そう考え、出して出して…朝。


体調はまぁまぁ回復したが、とりあえず下山する方向にした。


朝は残りの味噌汁を少しだけ飲んで。


帰宅するとホッとした。

早めに休んだ朝、体調は良い。


いつも通りの生活に戻り、不味いジュースの事も忘れだした数日後。


皮膚がただれた。

頭皮も荒れたのか毛が抜ける。

内臓が独特の苦しみに襲われる。


救急車を呼んだ所で意識を失った……


永遠に———


「山でカエンタケでも食ったんだろうな…保健所に注意喚起を出してもらうか」


遠くでそう、聞こえた気がした。


俺は食ってない……ただ………

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