第6話 クラスメイト①
「かずくん大丈夫!?」
そう言いながら俺の入院している病室のドアを開けてズカズカと入って来たのは京子だった。
「お前はもう少し静かに出来ないのか?一応病院だぞここ」
「だってかずくんが大怪我して倒れて病院に運ばれたって聞いたから!」
確かにそれはほんの3時間前の事だが、治療を受けたのでもう割と元気になって来ている。
「少し落ち着きなって」
俺は今ベッドのリクライニングを上げて、座っていたのだが、丁度目の前の机のコップの中に水があったので、それを京子に渡した。
京子はそれをグビグビっと飲み干し、一息つく。
「どこで何があったの?どうしてそうなったの?寝てなくて大丈夫なの?」
逆効果になってしまったか......
落ち着かせるためだったのだが、かえって喉を潤わせる結果となった。
「......ところでこの人は?」
京子が、病院まで俺に付き添い、この時間まで話し相手になってくれていた奈々美さんの方に視線を向ける。
そう言えばこの2人は初めて顔を合わせるのか。
「今回のクラス分けテストのペアだった遠山 奈々美さん。んでこっちが俺の家の隣に住んでる真宮 京子、仲良くしてやってね奈々美さん」
俺はそれぞれに紹介した。
「真宮さんよろしく」
奈々美さんが頭を下げると、慌てて京子も頭を下げる。
「よ、よ、よろしくお願いします!」
その後俺は京子にクラス分けテストの事をすべて説明することにした。もちろん奈々美さんの私情に関しては言っていない。
すべて説明し終わると京子はなんだぁ〜と言って笑っていた。
なんて自由なやつなのだろうか。
ちなみに京子はFクラスになったらしい。ペアの子もとてもいい子だそうだ。
そのまま午後6時まで3人で時間を潰すと、奈々美さんと京子は帰って行った。
そうして、その日から1週間2人は学校終わりに病室に寄って行くことが習慣となった。
何だかんだで2人が結構仲良くなっている気がする。
退院当日の朝8時、既に俺は家にいた。
「退院おめでとう!」
「お疲れ様」
玄関の外で10分前から待っていてくれた京子と奈々美さんが出迎えてくれていた。
今日は病院からそのまま学校に行く予定だったが、風呂にも入りたいし、教材などは全く持っていなかったので、一旦帰ることにしたのだ。
上手く馴染めるか、そればっかりが不安で仕方がない。
俺達は3人で1週間前と同じルートで学校に向かった。
学校に着くと桜はだいぶ散ってしまっていた。
それを見るとだいぶ時間が空いたなぁとまた不安になってくる。
4つある校舎のうち、一番遠い北館(他には東館、西館、本館がある)が俺達1年生の校舎だ。
途中3階で京子がFクラスに行く為に別れた。
Jクラスは4階の一番奥なので、教室までとても遠い。
教室に着いた俺はゆっくりとドアを開けた。
教室に入ると、もう3分の2程の生徒がいて、机に座り勉強する人、男子3人で固まって話している人、いろんな人がいる。
見渡す限りでは、俺と同じ中学の出身者はいないようだ。
俺の通っていた中学からここまでは割と近いので、かなりの人数受験した。
そのうち受かったのは17人と聞いている。
1人ぐらいいると思ったのだが......残念だ......
教室は白くてとても綺麗で、外から見えていたよりもかなり広く、40人が中に入っても窮屈さは感じなさそうだ。
ロッカーは外の廊下にあり、1人1つずつ掃除道具いえを少し細くしたくらいの大きさがある。
勉強するにしては贅沢過ぎるくらいだ。
黒板はなく、教卓の奥の壁に黒い線で縁取られている。
京子が言うには先生がこの枠内を専用の棒で触れると映像も勝手に動くらしい。早く見てみたい。
机は窓の方から順に6列ある。
俺の出席番号は13番、窓側から2列目の1番後ろだ。
俺は教室に入る。
教室は静まり返り、生徒の視線が席へと向かう俺に集まって来る。
なんか嫌だなこの感じ......
この空気感に対応しきれないまま、今度は少しずつざわめき出した。
しかし驚くのも当然だろう。今までずっと誰もいなかった席に座っているのだから。
とその時、8時40分のチャイムが鳴り、生徒が着席を始めると、教室の前のドアから人が入ってきた。
「はーい、MT《エムティー》始めまーす」
歳は20代半ばくらいで、女性、165cmぐらいの身長で、少し長めの髪を後ろで結び、黒いスーツを来ている。
ほんのりとしたオーラとおっとりとした顔付きにとても癒される。
この人が俺達Jクラスの担任、
電話で話した時に声は聞いたが、実際に会うのは今日が初めてで、思っていたよりも優しそうだ。
むしろ彼女でこの問題児クラスをどうにか出来るのだろうかと不安になるくらい、ふわふわしている。
ちなみに彼女が言っていたMTとはモーニングタイムの略称で、その日の予定や、今後の予定、大事なことなどが連絡される。
ということは......
「......今日まで怪我に入院していた茅山くんが無事退院しました〜皆さん仲良くしましょうね〜」
俺の復活も報告される訳だ。
「茅山 一樹です。西中学校から来ました。まだ学校に馴染めていないので、話しかけてくれると嬉しいです」
変じゃなかったよな......?
俺は静まり返った教室の中で少し緊張しながら、自己紹介を簡単に済ませた。
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