第3話 実技演習場②
「次の課題は海洋エリアとなります」
俺達の2つ目の課題は海洋エリア、ペアのうち1人がボンベを持って海に潜り、もう片方が船の中からビンの場所を探し、指示を出す。
話し合い(一方的)で遠山さんが海の中から、俺が船の上からソナーを使い、洞窟での課題と同じく紙の入ったビンを探すことになった。
あらかじめビンがあるポイントは教えられていたので、半径2kmの範囲を探せばいいだけだ。そう時間はかからないだろう。
教えられていたポイントまでは30分はかかる。まだ昼ご飯を食べていなかった俺達は船を自動操縦にセットして昼ご飯にすることにした。
「遠山さんこれ、支給されたものだから味は保証できないけど」
俺は2つ目の課題のスタート時に支給された弁当を渡す。遠山さんは黙ってそれを受け取った。
船の上で2人で黙って食べることに耐えきれなくなった俺は会話を試みる。
「遠山さんはここの中等部出身って聞いたけど、ここには何度か来たことあるの?」
「年に2回ここの施設を借りて実技試験をしていたから」
3年間、6回テストに来ただけで地図を覚えたのか。なんて記憶力だ。
そうして多少の会話をしながらご飯を食べ終わり、しばらくするとポイントに着いた。
「じゃあ、気を付けてーー」
ーーザブン
おぉそこまで明らかにされるとへこむぞ。
遠山さんは水圧に耐えることが出来る宇宙服のようなスーツに着替えるとすぐに海の中に入っていった。
それを確認して俺は船を操縦しながらソナーでビンを探し始める。ビンのような小さいものでも探せるんだからすごい技術だ。
5分で彼女のスーツに取り付けたロープがすべて船から海の中へ入っていった。海底に着いたのだろう。
「遠山さん北に船を進めるよ」
『任せるわ』
彼女とは無線が繋がっている為、するかしないかが問題なのだが会話をすることは可能だ。そして、彼女へは基本的に方角や座標を使って指示を出す。
そんな調子でしばらく辺りを捜索しているとセンサーに反応があった。どうやらビンがあったらしい。
しかし海の底は暗いはずなのに良く見つけれるものだ。遠山さんは俺よりも少し早く見つけたらしく真っ直ぐビンへと向っている。
『回収したわよ引き上げて頂戴』
「あ、あぁ今引き上げる」
俺は巻き上げスイッチを押した。ロープがゆっくりと巻き上げられてゆく。
巻き上げ始めて5分程で遠山さんが上がって来た。遠山さんが船の上で落ち着いたのを見て俺は岸へ向かうために船を進める。
しかし地下だから夜は来ないと思っていたが、外の環境を再現するというだけあって空、正確には天井が段々と暗くなって来た。
課題を開始したのが朝の10時で、1つ目の課題を終えた時点で既に1時を過ぎていたのだが、2つ目の課題を終えるのに思っていたよりも時間がかかってしまい、船を出し始めた時時刻は午後6時を回ろうとしていた。
「2つ目の課題クリアです、お疲れ様でした次が最後の課題です」
岸に着いた時には6時半になっていて、俺達は40組中7番目と順位を5つも落としたが、まだ挽回出来るだろう。隣の彼女はそうは思っていないみたいだが。
「次の課題をさっさと終わらせるわよ!」
ただでさえ会話が少ないのにこの状況では話しかけることさえ出来ないじゃないか。
相当怒っているみたいで、歩くスピードが早くなっている気がする。
それはそうと俺達は最後の課題まで来た。案外すんなり行けているような気もするのだが、3つ目の課題はジャングルを抜けるというものだった。今までとは違い、知識や経験がある者が素早く突破出来る仕組みだ。
「それでは最後の課題の説明を始めます。今回の課題では今までとは違い、実際にジャングルに生息する動物も配置させてもらいました。もちろん怪我をされては困るので怪我をする一歩手前で止まるようにはなっていますが、その度にそのペアには30分のペナルティが加算されるようになっています」
「説明は以上です、頑張ってください」
説明が終わると、ペアにリュックが1つと銃が2丁配られた。中には明かりとなる懐中電灯、携帯用の食料などジャングルを抜けるために必要になるであろうものが入っている。
中でも驚いたのは一緒に配られた銃で、この銃はここに出る動物のみに有効らしく、人相手には全く効果が無いというのだ。安全管理が徹底している。
しかしもうだいぶ暗くなっているが大丈夫なのだろうか。
時刻は7時を過ぎている。そのため見渡す限り木が生い茂るジャングルはとても暗くて静かだ。
流石にこの状況で、女の子を先に歩かせる訳にはいかないな。
「俺から離れないようにしてね」
俺は懐中電灯と銃を持ち、前を照らしながらゆっくり進んでゆく。遠山さんも俺の後ろに続いてジャングルに入った。
予想通りジャングルに入ると一層暗くなり、5m先もライトなしではとても見えない。
周りが見えないというのはかなり怖いもので、人の心理というものだろうか。
風が吹くと、木々が
昼間に聞けば癒されるような音なのだろうが、夜は一層不気味さを増すだけだった。
「やばい、ただでさえ神経を使うのに猛獣なんて出てきたら対処できな......!」
ガサガサッ
俺の心を見透かしたように、俺達の右前の方にある草むらが音を立てながら揺れる。
おいおい嘘だろ。まだ10mぐらいしか進んでないぞ。
「......くっ!」
俺は草むらから突如飛び出してきた黒い物体に、素早く懐中電灯の光を当てる。
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