第9話 運命 うんめい
「でもまぁ、それが本当に偶然だったかも知れねぇし、その逆かも知れねぇ」
「……」
結局は何にしても『全く分からない』という事である。
「ただ、あんたの顔によく似た
一つの例として挙げられるのが、『兄が短命』という事だろう。もちろん、それは何となく
いや、もしかしたらそのお兄さんたちも「これが自分の『運命』なのかも知れない……」と思っていたかも知れない。
そう考えると、非常にいたたまれない話だ。
たとえそう思っても最初は『受け入れられない』だろうし、たとえ『受け入れられた』としても、それはあまりにも悲しすぎる。
全て『運命』だなんて言葉で片付けられちまうなんて……
「それに、あんたと似たように『先を見通せている様に見える』のも気になんだよ。まるで、あんたを生き写したみたいで……」
「いえ、生き写し……とは少し違うわ」
俺の言葉を遮る様に
「……そうか」
「ええ、あくまで『私』は『私』で、『
たとえ、
「いえ、ここ場合は『個性』と言うべきかしら」
「……それは人によりけりだな」
わざわざ言い直していたけど、『個性』という言葉が出てきた事を考えると、やはり
「それに、あの『水球』は私たちが販売していたモノよりも厄介でね、一度水が全て溜まった時。兄様何か言っていなかった?」
「……? あっ、そういえば……」
思い返してみると、あの人は「ふと見上げた空に流れる『流れ星に願い』をかけた」と言っていた。
その内容は……確か『普通じゃない生活をしたい……』だったはずだ。
しかしあの時、「願いをかけたせいで色々変わってしまった」と言っていた。もちろん、本人にそんな気持ちはなく、本当に「まさか」だったらしい。
「その結果、私は
「……最初から……なかったんだな」
「ええ。だから、まさか彼女たちに出会ってそういった『先を見通せる』って聞いた時、本当に申し訳なかった」
「……あんたは、
ちなみに『先祖返り』とは、直接の両親でなく,それより遠い祖先の人が子孫に突然に現れる事を指すらしく、『
「それに私は、年を取れなくなった」
「……出家した後、あんたは何をしてたんだ?」
今までの
これ意地でも探し出しそうだ。
多分、『出家』という事を選択したのもそういう『捜索』をさせないためだったのだろう。
もし、『捜索』なんて事になってしまえば、
「私は……山奥で独りヒッソリと……生きていたわ。私の事を知っている人が誰もいなくなるまで……」
「……独り暮らしって事か?」
「正確には自給自足ね」
なんて笑っていたが、いくら『出家』したとはいえ、ずっと『独り』でいるのはやはり大変だろう。
それに時代が時代だ。
もし、これが
しかし、
それこそ電話もなけりゃあ、パソコンもない。考えてみると、そういったモノが出て来たのは本当に『つい最近』の話である。
「……この建物は元々ね。私の家だったのよ」
「えっ」
正直、その話には驚きだ。
「……取り壊されなかったんですか?」
今まで生活をしていて、もし生活をしなくなったら、普通は『取り壊してしまう』はずだ。
「それがね。なぜか取り壊そうとすると……その工事をする人が怪我をするのよ。しかも、災害が起ころうが火事が起ころうが全然壊れない……」
「……」
普通に考えると、それはやはりすごいのだろう。だが、俺はそれ以上に……
「怖くないか……それ」
やはりこの『気持ち』が真っ先に出てきてしまう。ここはやはり、『普通』ではないから……と思う。
何が起きても壊れない……。話で聞いていたり、噂になっていたりする事はあっても、実際にそれが目の前で起きると……。
人は、普通ではない『得体の知れない謎の恐怖』を感じてしまうのだと……俺は自分の心情を勝手にその時代の人に当てはめていた――。
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