第5話 変人 へんじん
「あなたの口から『あんた』って言い方以外で言われてのは初めてね」
「……なんで今まで黙っていた」
「……私の口から『
「そっ、それは……」
正直、信じなかったかも知れない。
いや、だってこんな純和風な……
決して人の名前に
でも、やはりどうしても『見た目』と『名前』とのギャップは避けて通れるモノではないと思う。
「まぁ、いいわ。それに、あなたにはまだ知られる訳にはいかなかったから……」
「それは、お兄さんの『
そういう事なら、
名前がバレていたら、
「……正直、あなたが倒れた事には驚いたわ。それは嘘じゃない。でも、心のどこかでは『兄さんが仕組んだじゃないか』って思っていたの」
「仕組んだ? もう亡くなっているのに……ですか?」
そんな事が出来てしまうと、
「ただ
「……」
「あの人……。
変人……か。
「でも、兄様はいつも何かしらモノを作っていてね。ここにあるモノのほとんどはその頃に兄様が作ったモノなの」
「すげぇな……本当に」
修繕や修理をしているからこそ分かる事だが、やはり時代を経ているからなのか多少は
しかし、俺がしているのはそういった部分を直しているだけだ。
「それに、植物もよく育てていたわ」
ただ、あまりに色々な種類の植物を植え過ぎたせいで、お父さんに怒られていた様だ。
「確か、あれは……『
「作っちゃった……って」
サラリと言っちゃってくれているが、要するに『新種の花』を自分で作り出した……という事である。
そういえば、確か『
「本当に……
「へぇ」
「それに、兄様がね。将来はお店でこの品モノを売りたい……なんて話した事もあったわ」
「……」
「それなのに……あの人はそんな兄様の将来を奪った」
突然、
「……
「……でしょうね。兄様、とても私に甘かったから……」
「自分の事なんてそっちのけだったのよ。でも、出ていく時に私に疑いの目がいかない様にわざわざ変装していかなくてもいいと思うのよ」
「……それも、お兄さんだからだろ」
「えっ」
「俺も弟だからあんまり分かんねぇけど、兄さんっていうのは、どうしても弟や妹を心配しちまうし、させたくねぇんだと。しかも、ちょっと
最後に『無意識』にと付け加えたのを聞いた瞬間。
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