少女だけが

きつくかたく閉じていた唇を開き

少女は彼の名前を呼んだ


その声は朝の森を駆け抜け

その響きは夜の空を震わせ

この星を、この銀河を塗り替える


体の奥に鎮めていた激情を開き

少女は彼の名前を呼んだ


その声は昼の海を駆け抜け

その響きは今日と明日を震わせ

この宇宙を、無限の時間を塗り替える


彼の名前を知っているのは少女だけ

彼を必要とできるのは少女だけ

運命を握る少女は彼を呼ぶ


混沌に呑まれた世界の崖に立ち

その温かな血が蒸発するまで

その滑らかな骨が砕けるまで

少女は彼を呼び続けた

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