賢者の空、愚者の空

とある町の人々が彼を賢者と呼び

とある町の人々が彼を愚者と呼ぶ


彼は家を持たず

彼は財を持たず

彼は友を持たない


彼が持っているのは一通の手紙と

彼の妻が写っている一枚の写真だけ


とある町の人々が彼を慈悲深いと言い

とある町の人々が彼を薄情だと言う


彼は過去を語らず

彼は未来を語らず

彼は己を語ろうとはしない


彼が語るのは今日の空の美しさと

彼が愛した妻の美しさ


とある町から彼は旅立つ

妻が愛した空を見るために

ここではない空を見るために


賢者と呼ばれた男はひとり歩く

愚者と呼ばれた男は空を探す

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