異世界の戦場にて
大介丸
第1話
ダラムグル帝國を象徴する紋章が爆破されて砕け散った
それは帝國議会議事堂の屋上に掲げられていた、巨大なモニュメントだった。
この光景に大歓声を上げるのは、長い戦役の末帝都ウルガナへ突入した、
アルフレア大陸西部の連合国将兵だった。
アルフレア大陸西部列強国スプンタナー王国の将兵に混じって、
トラロジュール、ヘーリドラ、ヴィシュローネ、ヴェラルモマティ、シュロプライアなど、国土が占領されていた近隣諸国の将兵も、少なからず混じっている。
またそこには、アルフレア大陸で生活している人間種族の他に各種族の姿も
存在した。
ドワーフ、エルフ、 ホビット、ノームといった種族の他に、フェアリー、
フェルパー、ラウルフ、ムーク、リザードマン、ダークエルフ、シャドウエルフ、そして、各種の混血種族の姿も。
――――ダラムグル帝國東部ウルドゥン河畔の都市ヘーリトリから、帝都ウルガナの間に存在する丘陵地帯。
戦闘で流された夥しい血液が、空までも染め上げるような夕暮れの下、
汚れた野戦戦闘服を纏った男性が、右手に持っていた戦闘報告書を確認して溜息をついていた。
その男性は、黒色の頭髪と日焼けをした肌、二重瞼の眼の騎馬騎士のような精悍な風貌だ。
男性の付近には、同じように疲労困憊をした表情を浮かべ、汚れた野戦戦闘服を纏った者達の姿があった。
彼が所属しているのは、傭兵団『
その傭兵団内で特殊武装機動猟兵大隊『
いた。
部隊の任務は主に敵戦線後方の深部偵察を行い、秘密戦争を展開する。
敵支配地域での高度な任務を遂行偵察部隊という職種だ。
実際は、緻密で高度な索敵、偵察、竜騎兵が操る飛龍からの爆撃の誘導、待ち
伏せ、標的の補足といった任務などを行っている。
彼が率いる第4小隊『
秘密小隊だ。
任務は、純粋な軍事作戦とは異なっている。
敵陣営側に雇われた傭兵団の幹部や正規軍の要人、敵陣営側に寝返った 裏切り者などに対しての誘拐、脅迫、暗殺など数多の
非合法作戦は契約した陣営側にも味方の『
に所属する傭兵団員にも機密なため、隊員の選抜は厳しく定められている。
約三年間傭兵団『
潜り抜けた
なおかつ機密保全の完全な者が選抜されている。
終結末期、彼がいる付近一帯では、帝都ウルガナに迫る連合国とそれを阻止しようとする、ダラムグル帝國第7軍との間で壮絶な戦闘が行われた。
爆撃と火災により瓦礫の山と化した廃墟を効果的に使って防衛するダラムグル帝國第7軍正規軍含め、ダラムグル帝國国民義勇戦闘隊、学徒挺身隊、各方面から
組織的に撤退して再編された将兵、さらには前年以来、ダラムグル帝國内の各戦域から逃れてきた難民が立ちはだかっていた。
もはや後がないため、連合国軍に対して死にもの狂いの壮絶な攻撃を
展開してきた。
そのため、大な犠牲者を出すとも連合国側は遅々として進軍はできなかった。
そんな最中、傭兵団『
彼を呼び出した。
この時、彼の悪魔的なほどの生存テクニックと殺しのテクニックに、上層部は
嫉妬という魔物に憑りつかれていた。
この状況を利用して彼を『抹殺』するため、傭兵団『
『ダラムグル帝國第7軍が構築している防衛線を蹴散らして来い』
この状況を利用するため、傭兵団『
一体どのような事なのかは、永久に闇の中だ。
そうでもないと、そう安々と命令などは下されない。
その辺り彼は、嗅ぎ取ってはいたが特に異論も言わずにそれに従った。
それにこの様な事は、彼に取っては毎度の事のため無駄な時間を過ごすよりも、最前線で闘いぬく方がまだ良いと判断したからだ。
ダラムグル帝國第7軍正規軍が、帝都ウルガナに構築された第2線防衛陣地に
敗走する6週間――――。
味方側の竜騎士による上空からによる猛烈な爆撃と、上級魔術師による上級攻撃魔術支援が昼夜にわたり続く中、第4小隊『
傭兵士官学校で徹底的に教え込まれ、幾多の戦場で鍛えた
容赦のない凄惨な近接戦闘行為に、敵見方とも震え上がった。
その中で、とある正規軍連合軍将兵のノーム族の男性1人が傭兵団『
「今、最前線で闘っているのは、お前達の
何なんだあいつ等は」
理解できない表情を浮かべながら尋ねた。
「
そのラウルフ族の傭兵団員は、昏い笑みを浮かべながら応えた。
眼には、殺意と憎悪を孕んでいた。
また、正規軍連合軍将兵は、『
――――その原因の一つとしては、『
「戦友っ、糞漏らしながら逃げるダラムグル帝國第7軍正規軍は、腰抜けと性的不能の集まりの様だな!
国民義勇戦闘隊は、国民義勇戦闘隊で、美人エルフ女やセクシーなダークエルフ女に振られて自棄になって自爆攻撃を仕掛けてくるはた迷惑な連中だし、
学徒挺身隊は、学徒挺身隊で、戦闘高揚剤を無理やり飲まされて、ネジが三本も
四本も飛んでぶっ壊れた連中だ・・。
最後に、鬼気迫る表情で突撃してくる集団は、女房と恋人を寝獲られて男の尊厳を踏みにじられて怒り狂っている連中だ。
まったく、ここにはいつも以上に真面目な戦争をする気のない連中が
居座っていやがる」
特殊携帯用バルカン砲をぶっ放している、第4小隊『
「なに、毎度の事だ! 別に珍しい事でも何でもないぞ、戦友!
特に、最後の集団特攻してくる連中はあれだ。
奥さんや恋人を寝取られたから破れかぶれになっているだけさ」
第4小隊『
ウェルパー族の傭兵団員が自動小銃をぶっ放しながら叫ぶ様に応えた。
「つまりこの場にいる連中は、いつも以上に真面目に戦争する気がないのが配置されているって事か――――いろんな意味で業の深い戦場だぜ」
第4小隊『
エルフ族の傭兵団員が、手榴弾を投げながら会話に割り込んだ。
「同族出身者に対しても、遠慮なく手榴弾を投げる戦友のその言葉には痺れるな。
尊敬もするよ」
第4小隊『
人間種族の傭兵団員が、自動小銃に弾倉を装填させながら応えた。
「あんな商売女でヌいて、あげくに性病うつされてひいひいほざいている様な連中は、同じ種族出身者とは思いたくもないね」
そのエルフ族の傭兵団員が不機嫌に告げた
「向こう側のエルフ族も、『女の抱き方も知らない糞餓鬼どもが、同じ出身種族と思えば、虫唾が走る』とか言っていると思うな」
人間種族の傭兵団員が若干呆れた表情を浮かべながら応えた。
「この戦争は、いろんな意味で業が深いぜ」
第4小隊『
ホビット族の傭兵団員が疲れた声で呟きながら、 二個の手榴弾を投げた。
その様な会話を形振り構わぬ壮絶な波状攻撃を受けながら、もしくは 迷路と
化した建物一つ、部屋一つを奪い取っていた。
第4小隊『
の塊となった廃墟に突入しても、防衛側は死にもの狂いで抵抗した。
完全に占拠しても地下道や下水道を使って逆襲をかけてきた。
そのため、第4小隊『
地下壕を発見すれば、情け容赦なく負傷兵や避難民ごとありとあらゆる火力で
攻め、苛烈なほど追い立てて殲滅繰り返した・・・・・
――――戦闘終結後
「命じられた通りに蹴散らしたんだが、毎度の事ご不満でもあるのか」
彼は、疲れた表情を浮かべながら尋ねた。
「その毎度の
戦闘報告書を持ってきた、第4小隊『
傭兵団員は、端整な目鼻立ちで、ミュージャンの様に整髪剤を適度に付けてかき乱した様な髪型に、右耳だけに付けたピアスを付けた男性だ。
男性は――――第2分隊長のジャレッド・バトラー。
冒険者から傭兵に鞍替えした変わり者だ。
ギャング組織などの下部組織に所属しているチンピラの様な風貌だが、
見掛けに油断し血の海に沈められた者は数多く、傭兵業界では『眠れる狂獣』と
いう物騒な仇名で知られている。
「俺にだって色々の事情があるんだ・・・、しかし、今回も手酷い損害を
受けたな」
彼は、再び戦闘報告書に視線を向けながら尋ねる。
「今年度に入って、『
所属団員の戦死は、50名です。 今回の損害を入れるとさらに増えますよ」
ジャレッドは、短く応えた。
「幹部連中は、特に俺には死んでほしいみたいだからな。
毎度の事で驚きもない」
戦闘報告書に眼を通しながら告げる。
「――――何時もの事ですね。
本隊の連中も、これまたいつも通り命令さえあれば喜んで嬲り
殺しにしてやるみたいなツラしてますよ。 一様同じ傭兵団に所属しているんですけどねぇ」
ジャレッドが呑気に応えてると、彼は戦闘報告書から再び視線を外す。
視線の先には、傭兵団『
姿があった。
彼達に向けられている視線は、殺意と憎悪に彩られている。
中には、銃器の安全装置をいつでも外せる様に準備している団員の姿もあった。
その集団には、連合軍将兵の部隊の姿も確認できた。
常識外れした勇猛ぶりを見せつけられたか、貌を青ざめさせている。
「今更気にするような事じゃない。それよりも、作業を続けろよ」
彼は、そう告げた。
「了解。さて、次は何処の戦場ですかね。今回は勝ち戦側でしたが、
毎度の事ならは、負け戦側ですかね」
ジャレッドは尋ねてきた。
「さあな。
戦場を歩き回る戦争屋だ。
戦場がある場所が
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