挿話 All the love in the world
「バイタル落ちてます! 血圧90まで降下!心拍低下!先生っ!!」
「リンゲル毎分25だ!いいか?ゆっくりだ…ゆっくりだぞ…」
「依然心拍低下!あぁ先生!ショック来ます!!」
「エピネフリン!急げっ!!……ご家族を!」
―――あぁ…なんだか騒がしいですね……
うるさくてのんびり寝てられないじゃない
「めぐみん!めぐみん!頑張れ!」
―――カズマ?……何言ってるんですか?
私はのんびり寝たいだけなんですけど………
「めぐみんっ!頼む!目を開けてくれ!頼む!!」
――――ダクネスですか……何泣いてるんです…?
………あぁ…眠い………寝いんですよ……
「先生! バイタルさらに低下!このままでは母体が危険です!」
「……帝王だ!緊急開腹する。準備しろ!」
「めぐみんっ頑張れ!俺もダクネスもついてる!頑張れ!お前は世界最強なんだ!こんなとこで負けてどうする!? お前は世界最強のパーティの世界最強の大魔道士だ!俺たちに敵うやつなんて居やしない!頑張れ! 俺の…俺の嫁さんだろ!? 負けるな……負け…るな…よ…… 爆裂して…笑って……俺のとこに帰って来いよ……なぁ?…なぁ?…めぐみん?…頼むよ…俺のそばに居るって……ずっとずっと…居るって言っただろ!?」
「先生!またショックです!」
―――カズマ……泣かないで……がんばります
…わたし……がんばりますから……泣かないでください…
……めあねすは……めあねすだけは……絶対に!……私が護る!!
……待ってて――──
「心拍停止‼救命…――――――
****************
―――めぐみんさん
―――めぐみんさん
白光が私を包む………
……あったかい…
……どこ?…ここ………
何もない白い空間
突然間近から声がする。
「めぐみんさん。」
…エリス…?
…私は死んだのですか…?
「いえ、めぐみんさん。あなたはまだ頑張ってめあねすの命を繋いでいます。……ですが、あなたの身体はもう限界を超えています。
すでにあなたが臨月を迎えた頃には、とっくに限界だったはずですね?
…あなたは本当に気丈で…強い方です。普通の人間なら臨月を迎えずして干からびていたことでしょう。
あなたはご存じであるように
めあねすには恐ろしい程の量の魔力を供給し続けなければいけません。
元々、女神である姉… アクア先輩のお腹にあった子です。
それを人間であるあなたが引き受けるのは不可能だったはずなのに……
カズマさんにも言えず……みんなに黙って………苦しかったでしょうね…本当に死ぬほど辛かったでしょうね………
そして今まだあなたは、こうやって死ぬまでめあねすを護ってくれている……。
なんて……なんて強いひとですか…あなたは……
私は…アクア先輩が最後に私に言い残したことを守りに来ました。
アクア先輩は…あなたがこうなることを本当に心配していたんです。そして私に力を貸すようにと言われました。
私は、アクア先輩が信じて
めあねすを託したあなたの力を信じます。
そして、ひとりの友人として、あなたとめあねすを護らせて下さいね。
どうか、私の力をお使いください。いきます」
───白い光が私を包む――
――エリス……ありがとう……
私とめあねすを助けたら
きっとあなたも罰を受けるでしょうに……
――少しずつ力が私に流れ込んでくる……
綺麗な色の力ね。エリス。
繊細で…とても力強い……。
あなたはいい女神になれますよ?
私が保証します。
あなたの友人として居られることを
心から誇りに思います。
─────……………?
……なんか右手からあたたかいものが流れ込んでくる……?
とてもあたたかい……とても心地いいもの………
――まさか?!……エナジードレイン……?!…カズマ?!……ダクネス……?!
「――ふふふ」
――エリスが笑ってる。
私は良いから!笑ってないでカズマたちを止めて下さい!
二人が死んじゃいます!!
「あのカズマさんとダクネスを?無理ですよ?めぐみんさん。主神様をも
―――もぉぉぉバカカズマ!バカダクネス!!
もぉぉぉお!待ってなさい?! 帰ったらひどいんだからね!!
「ふふふ」
―――アクア?力を貸して。お願い。私に力を………
……めあねすを…カズマを…ダクネスを…エリスを…
……みんなを護る力を貸して!
お願い!!
―――――――――――――――!!
突然
爆発的に青い光が満ちる。
エリスの白い力も私もすべてのみ込んで、白い世界は透明な青い光に完全に包まれた。
――何これ?エリス?どうなってるのですか?
「………分かりません…。ただ、私の力が……どんどん強くなって…る?……え!?」
………!?…………
青い世界の中心が揺らぎ始め人の形を作りだして―──
―――アクア?…………違う………誰…!?
美しい青い髪をひとつに束ね、それは床につくほどに長く、白い羽衣をまとい、アクアにどことなく似た容姿だが、彼女にはない妖艶な絶対の美しさで、目が離せない。
そのひとは
私とエリスを見やり、
エリスが小さく叫んだ
「まさか!?……サラスヴァティ様…!?」
「めぐみんさん。そしてエリス。あなたたちの優しさに感謝します。我が最愛の愛娘の忘れ形見を、生命をも賭して護って下さって、本当にありがとう。
もう大丈夫。
私の力をあなたに預けます。めぐみんさん。
どうかあなたの愛するものたちと我が愛娘の忘れ形見を護って下さい。お願いします。
そしてエリス。
あの子の愛した世界をこれからもずっと護り続けてね。お願い。
あなたたちの未来に祝福を!」
そう言い残し
青い光は収束して私の中へ消えた。
そのまま私の中で光が明滅し、身体中から青い焔がめらめらと……
―――凄い!! 力がみるみるみなぎってくる!エリス!? 私。凄いことになってます!
「そうでしょうね!天界最高の大精霊の力と祝福を貰ってしまったんですからあなたは!!私まで!凄い!!光栄です!!きゃーっ!すごい嬉しいっ!!」
エリスがほんとに嬉しそうに上気した顔で叫ぶ。
―――大精霊? あのひと、大精霊様なのですか!?
「えぇ!大精霊にして七福神のおひとり、幸運と富と芸術を司っておられる神。大精霊サラスヴァティ様です!そしてアクア先輩の御母様です!!」
―――えぇぇぇぇっ!?ほんとに!? アクアのお母さんって……
ってこの力、尋常じゃないですよ!? わっ、私では制御出来ない!
「それじゃぁさっさとめあねすを産んじゃってさっさとカズマさんの元に帰りましょうか!」
―――えぇ!あいつらぶっ飛ばしてやりましょう!!
「じゃぁ門を開きますね!あなたとめあねすに祝福を!
さぁ。行ってらっしゃい!!」
****************
「……先生…。急激に心拍数、血圧
ともにバイタルが…正常に………!?……戻りました…。」
「は!?」
「患者が意識を!」
「――――――莫迦勇者っ!莫迦クルセイダー! 今すぐドレインを解きなさい!ぶっ飛ばしますよ!?」
「…え!?めぐみん…大丈夫…なのか?」
「大丈夫ですからそれ以上ドレインしないで!あなたたちが死んじゃう!!ぶっ飛ばしますよ!?」
「「はっ はい!」」
カズマもダクネスもぐったりとしているが、急いで私から手を離す。
「今から私はめあねすを無事に産みます!いいから四の五の言わずに私にキスして下さい!」
「はっ はい‼」
カズマがそっとキスしてくれる。
「お姉ちゃんも!」
「はっはい‼」
ダクネスがキスしてくれた。
「じゃぁ二人で私の手を繋いでてください! 痛いから、泣かないように絶対離しちゃ嫌ですよ!?」
「「はいっ」」
「先生!?お願いします!」
「はっはい!」
****************
「……!?……4…929グラムの……元気な…女の子で…すよ!?」
「「よっよんせんー!?」」
――みんな一斉にツっこんだけど、私はわかってましたよ?
アクア?あなたでしょ!?
4929だなんて。
この子は
カズマやアクアやダクネスやエリスや私やアクアのお母さんや
世界中のみんなに生命を繋いで貰って
こうやってみんなを繋いで
愛される為に産まれて来たのですね。
この子に逢えて本当によかった。
めあねす。
ようこそ私の愛する世界へ。
あなたは
世界一幸せになるために産まれて来たのです。
この世界中にあるすべての愛をあなたへ。
そして
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