第56話 新たな門出?
スラムを後にしたスバル達は、寒々とした夜の街を彷徨い、結局は怪しいラブホテルに入り込んだ。
しかしながら、それはスバルにとって、とても居心地の悪い状況となっていた。
「由華は少し遠慮するのですね。そのうちガバガバになって、ダーリンに捨てられるのですね」
「ちょ、ちょ、ちょ~~、ガバガバになんてならないわよ! 失礼ね。それよりも、ナナは止めた方がいいわよ。スバルって本当にビックマグナムなんだから、裂けるわよ」
「く、く、悔しいのですね......口惜しいのですね。ちょっと、ダーリンのアレを銜え込んだだけの癖して、一人前に女気取りなのが気に食わないのですね」
「銜え込んだって......もう少しマシな言い方があるんじゃないの?」
湯船に浸かったスバルの前で、素っ裸の由華とナナがいつまでも口論をしているのだ。
――このパターンだと、最後は俺に振ってくるんだよな? なんて答えれば......ナナにはするって言っちゃったし......
不安を隠し切れないスバルだったが、そこで疑問に思い始める。
――あれ? なんでナナが突っ込んでこないんだ? 何時もなら脛蹴りが来るはずだが......まあ、この状態で蹴りようはないが......そういえば、スラムでも突っ込んでこなかったよな......てか、これで話題を変えるのがベストか......
さすがにラブホテルだけあって、三人が入っても余裕の広さなのだが、脛蹴りを食らわせえるほどの余裕はなかった。
それはそうと、スバルは疑問に思ったことを尋ねることにした。というか、それで話が逸らせると感じたのだろう。
「なあ、ナナ」
「えっ!? ダーリン、ついに私とやる決意ができたのですね」
「いや、すまん。その話じゃないんだ」
喜びを露にしたナナに、違う話だと告げると、その笑顔は一気に反転した。
――ぐあっ、こいつ、般若か!?
まるで福の顔が一瞬で般若に変わったような状況に、スバルは思わず身体を引いてしまった。
「なぜ、逃げるのですかね」
「そんな怖い顔で睨まれたら、誰でも逃げるわよ」
不服そうなナナに、由華が大きな胸を揺らしながら突っ込む。
そんな由華の胸を眺めつつ、スバルは場違いな想いに耽るが、途中で本題を思い出す。
――なんか、前よりもデカくなってないか? 俺の心眼だと、由夢よりも大きくなってるぞ? もしかして、俺のお陰か? いやいや、今はそんな事を考えている場合じゃないんだった。てか、これにもノーアクションか......
「なあ、俺の考えを読んでないのか?」
話が進まないと感じたスバルが率直に尋ねると、由華に突っ込まれて余計に表情を引き攣らせたナナが視線を彼に向けた。
「身近な者の考えは読まないようにしてるのですね。さすがに失礼ですからね」
――だったら、これまでは何だったんだ?
疑問だらけで首を傾げるスバルだったが、ナナは気にした様子もなく話を続けた。
「だから、これまで由華やミケの考えは読んでなかったのですね。だって、相手に何もかも考えを読まれていると思うと、気持ちが落ち着かない筈ですからね」
――ふむ。一応は周りに気を使っているということか。
スバルはその言葉を少なからず納得できると考えたようだ。
そんな彼の前では、ナナの話が続いている。
「これからはダーリンの考えも読まないのですね。ああ、戦闘の時は読むかもですね。その方が対応が早いし、相手に行動が読まれなくて助かるのですね」
――戦闘に関しては、確かにその通りだな。てか、これからは考えを読まれないんだ......嬉しい筈なんだが、なんか寂しい感じがするのはなぜだ?
ナナの答えを聞いて、嬉しいのか寂しいのか、自分の気持ちが解からなくなってしまったスバルだったが、そこに由華が割り込んできた。
「ねえ、これからどうするの?」
――どうしよう......由華とはエッチしたいけど、ナナがなんていうか......
由華の言葉に、スバルは現状をどう収めようかと頭を捻る。
「違うわよ! この先の方針よ」
――あう......そっちか......
読心能力を持っていない由華から考えを読まれ、あからさまに慌てるスバルは、彼女と並んで自分の向かいに居るナナから白眼を向けられた。しかし、それを見なかった事にして、スバルは自分の考えを告げた。
「当然、由夢を助けに行くぞ? その後は、帝都破壊かな?」
「私が考えた通りね。でも、由夢の居る場所は解らないわよ?」
――そうなんだよな~。ユメは神威の塔って言ってたけど、誰も知らなかったもんな......どうやって、由夢の居る場所を突き止めようか......
由華に突っ込まれて、頭を悩ませるスバルに、ナナが自分の考えを告げてきた。
「私が考えを読むのですね。だから、新薬を投与している研究所を襲撃するのですね」
「おお! それは思いつかなかった。確かに、俺も仕返ししたいし、グッドアイデアだな」
「確かに悪くないわね」
盛り上がるスバル達だったが、本当に三人だけで突っ込むつもりだろうか。
既に、この時点で三人共が頭が麻痺しているような気がするのだが、何処でもクラッシャーズとしては、これが当たり前なのだろうか。
それはそうと、そんな訳でこれからの方針が決まったのだが、そこで苦難が遣ってきた。
「それじゃ、これからの方針も決まったし、心置きなくできるのですね。由華は少し目を瞑っているのですね。まあ、見たければ見学しても構わないのですね」
「ちょ、ちょ、ちょ~~! そんなの勝手に決めないでよ!」
再び言い争いを始めた二人を見て、スバルはこっそりとバスタブから出ようとしたのだが、物の見事にバレてしまう。
「ちょ~、何処に行くのよ!」
「ダーリン、逃げるのですかね?」
「いや、ちょっと、トイレに......」
必死に言い訳を口にスバルだったが、二人は容赦なく攻め立ててきた。
「じゃ、トイレに行く前に、どっちと先にするか決めてよね」
「そうなのですよね。ダーリンが決めれば良いのですよね」
「うぐっ!」
――どうしよう......これは拙いパターンだ。片方を立てれば、もう片方が立たなくなる。ううう~~。
悩むスバルに、由華とナナが突き刺すような視線を向けてくる。
――痛い、痛すぎる......
二人の視線で串刺しにされたスバルは、結局、邪道な方法を選択した。
そう、スバルは二人にジャンケンで決めるようにと告げたのだった。
スバルの前には、なぜか勝ち誇ったような幼女が座っていた。
おまけに、その幼女は下着姿であり、ロリ趣味であれば誰もが絶叫しそうなシチュエーションなのであろうが、柔らかいオッパイ好きなスバルからすると、そのペッタンペッタンの胸を見て溜息を吐きたくなるのも仕方ないだろう。
更に、そんなスバル達から一メートルも離れていない場所に、眦を吊り上げた由華が座っているのだ。スバルからすれば、俺にどうしろと言いたい気分に違いない。
「さ~ぁ! ダーリン、私が勝ったのですね。潔く貫通式を執り行うのですね」
負け犬でも見るかのような視線を由華に向けたまま、ナナは膝立ちでスバルに迫る。
「わ、わかった! わかったから。由華もいいな?」
「う、う、う、良くないけど......仕方ないし......」
スバルが念を押すと、由華は思いっきりしょぼくれていた。しかし、そこでスバルはフォローを入れる。
「次はお前の番だ。そしたら、思いっきり愛してやるからな」
それは癒し魔法であるかのように由華を蘇らせた。
「ほ、ほんと? 沢山愛してくれる?」
「ああ、沢山な! それに、お前の好きな奴もな」
「うん。だったら、少し我慢する......」
一気に笑顔となった由華は、ゆっくりと頷くのだが、それを見ていたナナが発狂しそうな様相を見せたかと思うと、行き成りスバルに襲い掛かった。
「キィーーーーー! その信頼関係が......悔しい~~~! 由華、そこで、私の貫通式を見ているのですね」
「ふ、ふん! 平気だもん! 見ていればいいんでしょ! 痛くて泣いても助けてあげないわよ!」
「泣いたりしないのですね! さあ、ダーリン、するのですね......って、なんで大きくならないのですかね。コイツ、失礼ですよね」
さすがに、幼女の下着姿では全く反応しないスバルのビッグマグナムに、半眼のナナがケチをつける。
「多分、このままだと無理だと思うぞ? なあ、俺達、ちょっと特殊な関係だけど、みんな俺の彼女になるんだろ? 仲良く一緒にやらないか? そうでないと、俺も嬉しくないし」
半眼のナナと腹を決めた表情をしている由華に向けて、スバルはここぞとばかりに本音を告げる。
すると、由華が己の気持ちを吐露した。
「この関係が避けられないのなら、私も......その方がいいかな」
どうやら、由華はスバルに賛成らしい。
それを見たナナは、全くビッグにならないスモールマグナム、いや、豆鉄砲を悔しそうに指で弾きながら頷いてきた。
「さすがに、これがこの状態じゃ、仕方ないのですね」
結局、三人一緒にということで丸く収まってホッとしたスバルは、由華とナナに口付けをする。
「サンクス」
「いいのよ! 惚れた私の負けだもの」
口付けをされた由華はテレテレで頷いてくる。
「ジャンケンで勝ったのに悪いな、ナナ。でも、この方が後腐れないだろ?」
「仕方ないのですね......うひゃ! なんかドキドキしてきたのですね」
スバルが謝ると、ナナは少し不貞腐れた態度を執ったのだが、口付けをされると一気に舞い上がった。
こうして三人一緒の一夜が始まった。
「ナナ、なんか足がぬるぬるするわ」
「えっ? それって、由華がやっていると思ってたのですけどね」
「ん? 何か、絡まって来たぞ?」
少しづつ盛り上がり始めた三人だったが、途中で何かおかしな状態になっていることに気付く。
「な、なによ、これ!」
「どこから入り込んだんだ、これ? 植物か?」
「拙いのですね。敵なのですね」
異常に気付いた三人だったが、その時は既に手遅れだった。
そう、大きなベッドの上に座る三人の周囲には、見たことも無い植物の
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