独身リーマン異世界へ!

クロヒロ

独身リーマン異世界へ!

第一章 ようこそ!第二の人生へ

第1話 プロローグ

「いたたたたた・・・」


 気が付くと、俺は見たこともない部屋の中で寝転がっていた。全身からひどい痛みを感じるが、どこにも怪我はないみたいだ。


「一体ここは・・・」


「よ、気がついたかい?」


 俺が自分の周囲を確認していると、どこからともなく声が聞こえてきてビクッとなってしまった。


「誰?」


「俺?俺は「この世界の神様」だよ」


「アナタアタマおかしいひとですか?」


「まあ、それはいいとして。君が今置かれている状況について説明するね」


 そう言ってその声は俺の言葉なんか無視して、目の前に映像を出現させた。


「え!?なんだこれ!突然テレビが目の前に・・・・・」


 俺は心底びっくりしていた。だって突然目の前に映像が現れるんだぜ?


「これは今日の君の一日を映像化したものなんだ。これで、現状を把握して欲しい」


 そして目の前に映し出された映像を見て、俺は今日一日、さっきまで俺の身に起こっていた出来事を克明に思い出していた。


 そう、俺は今日、会社をクビになった。




 40歳で独身童貞サラリーマンの俺は、自分より若い人事部の人間からリストラ宣告を受けた。


 会社も非常に苦しいとか、長年当社に務めてきた是永これながさんにこんな事を言うのはつらいのだがとか、掛けられた言葉はお決まりのセリフのオンパレードだ。


 他の社員も大体さっしが付いていたのだと思う。俺とあまり目を合わせないようにしていた。


 趣味はゲームとアニメ。他には何の特技もない俺がリストラされてこの先どうすりゃいいんだ。ま、何の特技も無いからリストラされたんだけどな。


 そんな事を考えながら、俺は今アパートへの帰路についていた。


 こんな日は早く家に帰って、この前購入した新作エロゲ「お兄ちゃんが大好きな妹達2ずっと一緒だよすぺしゃるぱっけーじ☆」をやるに限る。今日は沙織さおりちゃんルート攻略で現実逃避するしかないな!


 バコオオオン!


 下らない事を考えながら歩いていると、酔っぱらいが付近のファミレスの裏に置いてあるゴミ箱を思い切りる音が鳴り響いた。


 おっさんの足に生ごみがまとわり付いてるが、全く気にしてないようだ。まあ、酔っ払いだしな。


 俺も酒に酔えれば、少しはこのストレスも発散出来るかと思うんだけど、あいにく俺はアルコール全般がダメなんだよなあ。まあ、今日酒を飲んだら何をしでかすかわからん自信がある。


 俺がそんな事を考えながらファミレスの裏を通りかかると、裏口らしき所から、高校生くらいの男女が飛び出してきた。


 そしてゴミ箱と俺を交互に見つめる。


「いい年した大人がこんな事するなんて・・・。恥ずかしくないんですか!?」


 ファミレスから出て来た少女は、開口一番、俺をにらみながらそうののしって来た。


「いや、ち、違う!俺じゃないよ!」


 俺は必死に否定したよ。しかも、俺を睨んでる女の子、かなりの美人さんだった。


 ただでさえ人生の中でも最悪に近い日だと言うのに、なんでこれ以上不幸な出来事を背負わにゃならんのだ。


「ほら!あそこにいる酔っぱらいのおやじ!あの人がゴミ箱を蹴っていったんだよ!」


 そう言って、片足がゴミまみれになっているオヤジを必死に指差した。不機嫌なのかご機嫌なのかわからない足取りで、裏通りの奥の方へ歩いて行っている。


「あ、ご、ごめんなさい!」


 女の子のはその事に気付き、すぐに申し訳なさそうな顔で頭を下げる。ま、こんな状況には慣れてるけどね。


 バキイッ!!


 だが、一緒に出てきた男の子の方にはそれが伝わらなかったようだ。それと、彼女の前で良いかっこしようという下心も働いたのかもしれないな。そいつは「言い訳するな!」と叫びながら俺に殴りかかってきた。

 

 そして俺は、ファミレスの玄関前までふっ飛ばされる。付近の通行人が足を止めて何の騒ぎだと集まってきた。


「ちょっと浩也!やめて!人違いだから!」


「はあ?由衣も聞いただろゴミ箱をり上げる音。見ろよこいつ、いかにもそんな事しそうな顔してるじゃん!」


 おい!そんな事しそうな顔ってどんな顔だよ!


 俺は心のなかで抗議しながら、起き上がってファミレスの窓ガラスで自分の顔を映してみた。


 そこには、どこに出しても恥ずかしくないくらいなブサメンキモオタが映っており、あーこんあ顔だよな~と自虐じぎゃく気味に考えたりする。しかも殴られたおかげでキモさ5割増しだな。


 俺は先月、つまり2月に誕生日を迎えたばかりだ。そして彼女いない歴が40年に更新された日でもある。ついでに風俗なんか勇気がなくて行ったこともない。


 こんな高校生でも彼氏や彼女がいるのに俺ときたら、会社をリストラされて迷惑者と間違われて、挙句の果てに殴られたときたもんだ。


 あー家に帰って早くエロゲがやりたい。

 エロゲやって、それからどうしようか・・。

 やばいなあなんか涙出てきた。


「あの、ごめんなさい!私早とちりしちゃって!」


 さっきの女の子が近づいて謝りに来た。どうやら男の子の方も誤解がとけたらしく、申し訳無さそうに近づいてくる。


「いいよ、慣れてるし」


 カッコつけたセリフを言ってみたが、今の俺は顔がはれている上に涙と鼻水で、そりゃあ大変キモイ事になっていただろう。思えば子供の頃から何の根拠もないのに色々と俺のせいにされたよな~。


 そんな事を考えながら空を見上げてると、上空から何かが落下してくるのが見えた。


 そこで映像はストップした。

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