第36話

「許可できませんね」


 エーテル武具店を後にした俺はアンリを宿に預けて単身、天議会の拠点ホームに来ていた。

 そこで3界層解放を早めるように頼みに来たのだが、見事に却下されていた。

 頼みを却下したメガネ__ハーはエアディスプレイを操作しながら溜息を吐く。


「確かにプレイヤーの命は大切ですが、それで焦って攻略に挑んだところで勝率は低いでしょう。そもそもボスの攻略推奨レベルは37です。今のあなたがたでは到底歯が立たない。犠牲を最小限に、最良の結果を得る。これが我々天議会の方針です」


 そう言ってハーはメガネをクイっと上げる。

 攻略が出来ない、それならばもう道は1つしかないだろう。


「わかった、それなら俺は【攻略者パーティー】を抜けさせてもらう」

「なっ…!何を言っているんですか!そんな勝手が許されるとでも__」

「知るか。じゃあな、話は終わりだ」


 未だ何か言おうとしているハーを無視して俺は天議会の拠点を後にしたのであった。


  ☆


 宿に帰るとベッドに寝ながら、時折うなされているアンリとその横で心配そうにアンリを見ているナクがいた。

 ナクは俺に気がついたようで駆け寄ってくる。

 その表情は泣きそうだった。


「シュウ、アンリ大丈夫なの?」

「ああ、なんとかするしかない。明日、出掛けるぞ。ちょっと命懸けになるかもれないがな」


 そう言って魘されているアンリの横に立つと、汗で張り付いた前髪を掻き上げてやる。

 苦しそうに呻くアンリを見て俺はすぐに助けてやる、と心に決めてベッドに入ると目を閉じる。

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