アルファのオメガ
その時、僕たちの時間は止まる。違う時間軸に移動したみたいに。僕の意識にその時間軸からまた別の望む時間軸に移動し、目の前の大木からオレンジ色の光と共に山背高等学園の生徒の姿で現れた。僕たちに語りかけ記憶を見せてくれる。
大木が見せてくれた記憶は、とても昔の出来事だった……。
山背高等学園の門の前にあった樹木が、今のバス停の場所にあった。そう僕たちがバス停のベンチの前で話していたところに。2つ山の大木にとってそれは親の木だった。かつて存在していた親の木は、僕たちに似た5人が学園が開校するときに、昔、植樹をしていた。僕たちにとって大先輩の時代なんだろうか……。
「山背高等学園の生徒達は、私の親の木を大切にしてくれました。しかし時代と共に道路が出来、私の親の木は切り倒されたのです。その時、鳥に枝を2つ山の山頂まで運んできてもらい、今の私になりました。ずっと今までこの場所から山背高等学園を見つめ続けていました」
2つ山から見つめる大木は、オレンジ色の光の生徒となり。山背高等学園の1年に1度入ってくる新入生5人を選び、2つ山の力で願いを叶える力を悟り、毎年、優秀な生徒を生み出して山背高等学園を衰退させずに存続させたいという慈悲の気持ちがあったみたいだ。
今年は、大木の存在を見た僕たちが選ばれて、今この場所にいる。
「山背高等学園に進学して幸せだ」
「本当にそう思ったよ~」
「ありがとう」
「こういうセカイも……悪くないでしょ?」
「この言葉は、願いを叶えたい慈悲の心でオレンジ色の生徒がみんなに聞こえるように発したんだね」
――僕と君が望むことで、選択肢が出来てセカイが変わる――
2つ山に登り、大木から出たオレンジ色の生徒と出会い、この学園で生活をしていて感じたことだ。5人にはそれぞれ別々の望みがあり、願いがあり、それぞれのなりたい自分の生き方をこの学園で毎日続けている。そのことが誇りだと思う。
以前の山背高等学園でオレンジ色の生徒と出会い、学園生活をしてきた願いが叶った先輩達はどう感じてきたのだろうか? 僕たちは願いを叶えるオレンジ色の光の生徒を具現化した形で出会い、その存在を知ることが出来た。
始まりの終わり。終わりの始まり。アルファでありオメガである。悪いことも長く続かずにいずれは収束され終わる。そしてまた、いいことが始まる。森羅万象と繰り返される学園生活は、僕たちにとってそういう場所だと思う。
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