No.40『魔王戦』

根岸「ふはははは」


佐原「く、くそぉっ」


根岸「どうした勇者佐原よ、貴様はその程度なのか」


佐原「魔王根岸、お前を倒して、俺はこの世界に平和を取り戻すんだ!」


根岸「ふん、満身創痍のそんな状態で、どう戦うというのだ」


佐原「……俺は、この冒険を通して、様々なことを学んだ」


根岸「ほう」


佐原「大事なのは、力じゃない」


根岸「ふん、ありがちだな、人々の絆や想いなどという幻想で、この私が――」


佐原「大事なのは、酸素だ!」


根岸「えー」


佐原「どんな生き物だって、酸素がなければ生きられない、それは魔王根岸、お前だって同じだ!」


根岸「いや、まあ、うん、そうだけどさ」


佐原「俺はこの冒険を通して、酸素が大事だと学んだ」


根岸「一般常識を、長い冒険で学んできたのか」


佐原「仲間との絆や、友情が大事だとでも言うと思ったか!」


根岸「思ったよ、そういう流れだよ今」


佐原「俺は、ひとりだぁー!」


根岸「うん、ひとりだね」


佐原「そして魔王、お前も一人だ!ひとりぼっちだ!」


根岸「いや、仲間いるし」


佐原「えー」


根岸「一緒に世界征服しようぜ、ってベンチャー企業立ち上げたわけだし」


佐原「それが今では、魔王だと……」


根岸「ああまあ、実質4人ではじめたから、役職なんてのは俺ら4人には飾りみたいなもんだけど」


佐原「えー、何、じゃあ、魔王を裏で操ってる真の魔王とか裏のボスがいるわけ?」


根岸「いや、CEOと名誉会長と取締役社長がいる」


佐原「誰が、上なんだ……」


根岸「いや、そういうのないよ、適当に役職つけたから」


佐原「ぐぬぬ、そしてお前が魔王か!」


根岸「うむ、私が魔王だ!」


佐原「とりあえず、お前を倒して、俺は世界に平和を取り戻すんだ!」


根岸「閑話休題というやつだな、さあ、かかってこいひとりぼっちの勇者よ!」


佐原「ひとりぼっち言うなし!」


根岸「我々の友情パワーの前にひれ伏すがよい!」


佐原「くそぅ、なんか勝てる気がしない!」


根岸「ふはははは」


佐原「だがな、俺がこの冒険で学んだことは、酸素が大事ってことだけじゃないんだぜ!」


根岸「それだけだったら最悪だ」


佐原「因数分解も学んだ!」


根岸「お前はこの冒険で何をしてきたんだ」


佐原「勉強だ!」


根岸「普通さ、こういう冒険で学ぶモノって、目に見えないモノじゃ……」


佐原「因数分解! 目に見えない!」


根岸「いいよじゃあ、因数分解のパワーでかかってくるがいい!」


佐原「うおお、たすきがけクラーッシュ!」


根岸「ぐああ、係数のついた二次関数の因数分解がこうも簡単に!」


佐原「どうだ!」


根岸「……どうだじゃないよ、アホか」


佐原「俺の因数分解が効かない!?」


根岸「効くわけないだろう」


佐原「くそぅ、どうしたらいいんだ」


根岸「どうしてやればいいんだコイツ」





閉幕

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