遥か遠くへ

ささやかな喜びをかみしめて

この夜は遥か遠くへ旅立とう。

代わりになるものなど何もない。

ゆっくりでいい。

自らの足で歩き出そう。

遥かな国に何があるのかはまだ知らない。

遠くの街が暖かいのか寒いのかもわからない。

その国は

キサクな人であふれているのか

挨拶がわりにキスを交わすのか

目を見ただけでニコリと笑い合えるのか

その街でも

日は東から昇り西へと沈むのだろうか?

人々は

調子のいい歌を知っているのか

綺麗な宝石で着飾っているのか

ごちそうは……たくさんがいい。


喜びほども存在しない

もっともっとささやかな悲しみたちも連れて行こう。

それが誰かの希望となればいい。

誰かの笑顔を見るためにこの悲しみも連れて行こう。

代わりと言っては何だけど

苦しみだけは残していこう。

いつかの苦しみと比べないように。

いつかの苦しみで喜びまでを消さないように。

ささやかな苦しみをこの場所に置いて

この夜はどこか遠くへ旅立とう。


今日は東へ

明日は西へ

遥か未来は……もっと遠くへ。




              ~遥か遠くへ~

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