第22話 わい



いつからか、夢を諦めた―――かかえきれない夢を持ったものの、叶えたいのはどれだかわからなくなった。そしていつしか、コンビニのバイトに成り下がっていった。

いつか、人生は幸せになれるものだと信じていた。けれど、実際はこんなものだ。そう自分に言い聞かせ、ここまで歩んできた―――


明日はX'mas。世間のリア充どもはイチャつく。俺は三十で。ある程度の話相手はいるものの、友人はほぼ皆無だ。

まあいいや、そう思い近くのコンビニに入る。いつしか、自分のバイト先と同じチェーン店のコンビニにしか入らなくなっていた。

「うー寒ぃ……」

一人言を呟き、イージーリスニングのBGMを聞き流しながら弁当売り場に向かう。300円ののり弁を適当に選び、レジに向かう。

「温めますか?」

レジのキレイなお姉さんが聞いてくる。

「はい」、と返しながら俺はあんたに暖めて貰いたいわ、とか思いながら弁当を受け取る。

「ありがとうございましたー」背中に声を受けながら店を出る。

「あー、マジかー……」

空を見上げると、遥か彼方からは白い粒が降ってきていた。

「彼女もいないのにホワイトクリスマス……ってか、積もらないといいけどなー」

基本的に徒歩と自転車の俺にとって、アイスバーンとなれば死活問題だ。チャリで滑って転んで死んだりしたらシャレにならん。ガキんころは雪だゆきだと、騒いで嬉しかったものだが。今は大して嬉しいものでもない。

しんしんと降る雪の街を歩いている。それだけで違う世界のようで。

歩いていると急に既視感デジャビュを感じて目眩がした。

もう何度も経験しているような、夢か幻かのようで―――

誰かの夢なのか、俺の夢の中なんだろうか―――

胡蝶の夢、という言葉が脳裏をよぎる

何かにとりつかれているような。つかれているのか………本当に俺は実在してるのか……

そのおかしな思考を振り払おうにも、いかんせん状況が悪い。

頭痛。目眩。動悸。痙攣。けれど寒くて、底冷えするようなツメタサ

気づけば雪も強く降って吹雪いている。

辺りは次第に白く覆われていって、近くの家々も雪化粧して、銀世界に覆われてゆく

まるでドラマか小説の別世界のようで。

やばい、ガチで死ぬ……

体の芯まで冷やされていく感覚によって、俺はそこで意識を失った

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