第12話 ひづみ


いつからか、夢を諦めた―――かかえきれない夢を持ったはいいけれど、叶えたいのはどれだかわからなくなった。そしていつしか、コンビニのバイトに成り下がっていった。

いつか、人生は幸せになれるものだと信じていた。けれど、実際はこんなものだ。そう自分に言い聞かせ、ここまで歩んできた―――


明日はX'mas。世間のリア充どもはイチャつく。俺は三十で。ある程度の話相手はいるものの、友人はほぼ皆無だ。

まあいいや、そう思い近くのコンビニに入る。いつしか、自分のバイト先と同じチェーン店のコンビニにしか入らなくなっていた。

「うー寒ぃ……」

一人言を呟き、イージーリスニングのBGMを聞き流しながら弁当売り場に向かう。300円ののり弁を適当に選び、レジに向かう。

「温めはどうしますか?」

レジのキレイなお姉さんが聞いてくる。

「はい」、と返しながら俺はあんたに暖めて貰いたいわ、とか思いながら弁当を受け取る。

「ありがとうございましたー」背中に声を受けながら店を出る。

「あー、マジかー……」

空を見上げると、遥か彼方からは白い粒が降ってきていた。

「彼女もいないのにホワイトクリスマス……ってか、積もらないといいけどなー」

基本的に徒歩と自転車の俺にとって、アイスバーンとなれば死活問題だ。チャリで滑って転んで死んだりしたらシャレにならん。ガキんころは雪だゆきだと、騒いで嬉しかったものだが。今は大して嬉しいものでもない。

しんしんと降る雪の街を歩く。それだけで違う世界のようだ。街並みが違って見える。

ふと、既視感デジャビュをおぼえ目眩がした。

ほんの少し、世界の感覚が綻びる気がした

なんというのだろう、脳障害かなんかか、というくらいの目眩?物悲しいような、どうしようもない感情。

胸が、体が内面からほころんでゆく。

現実と解離してゆく。なにもかもが夢のようだ。胡蝶の夢?微睡みと意識がついえるような、きもちいいようなキモチ悪いような。。

もうずっと経験してるような、、夢か幻か。本当に現実なのか、ここは?なんだろうこの感覚、魂から落ち着かない感覚は?本当に気のせいなのか?

なんべんも時間をループしているとしても、その中で人は気づくことは出来ない、というのをどこかで読んだな、なんて思い出した。

まさかなあ……という思いと、もしかして、という不安が交錯する。

頭痛がする。目眩。動悸。けれど寒くて、底冷えするような冷たさで。イタイ。ツメタイ

気づけば雪も強く降って吹雪いている。。。

あれ、こんなに強かったっけ?

辺りは次第に白く覆われていって、近くの家々も雪化粧をしてゆく。銀世界に覆われてゆく

それはまるでドラマか小説の別世界のようで。

やばい、ガチでくっそ寒い……なんだよこれ……

体の芯まで冷やされていく感覚により、俺はそこで意識を喪った


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