第6話 ゆがむ
いつからだろう。夢を諦めたのはーーーかかえきれない夢を持ったはいいけれど、叶えたいのはどれだかわからなくなった。そしていつしか、コンビニのバイトに成り下がっていった。
いつかは、人生は幸せになれると思っていた。けれど、実際はこんなものだ。そう自分に言い聞かせ、ここまで歩んできたーーー
明日はクリスマス。世間のリア充はいちゃつく。俺は三十で。ある程度の話し相手はいるものの、友人はほぼ皆無。
まあいいや、そう思い近くのコンビニに入る。いつしか、自分のバイト先と同じチェーン店のコンビニにしか入らなくなっていた。
「うー寒ぃ……」
一人言を呟き、イージーリスニングのBGMを流し聞きしながら弁当売り場に向かう。300円くらいののり弁を適当に選び、レジに向かう。
「温めはどうしますか?」
レジのキレイなお姉さんが聞いてくる。
「はい」、と返しながら俺はあんたに暖めて貰いたいわ、とか思いながら弁当を受け取る。
「ありがとうございましたー」背中に声を受けながら店を出る。
「うっそ、マジかよ……」
空を見上げると、遥か虚空からは白い粒が降ってきていた。
「彼女もいないのにホワイトクリスマス……ってか、積もらないといいけどなー」
基本的に徒歩と自転車の俺にとって、雪が積もってアイスバーンとなれば死活問題だ。チャリで滑って転んで死んだりしたらシャレにならん。
しんしんと降る雪の街を歩く。それだけで違う世界みたいで。
なんだろう、デジャビュ、既視感が心を支配している。
何度も体験してるような?けど、夢?現?なんだろうこの感覚……ザワザワするような、心の中が落ち着かない感覚は?本当に気のせいなんだろうか?わざとらしく、体を震わせてみるも、その感覚が消えることはなかった
防寒対策として帽子もネックウォーマーも手袋もしてる重装備なのに寒い。当たり前だ、雪なのだから。気温も氷点下だろうか
なぜかすごく寒くなってきた。気づくと雪も強く降って吹雪いている。
あれ、こんなに強かったっけ?
辺りは次第に白く覆われていって、近くの家々も雪化粧をしている。
やばい、ガチでくっそ寒い……
体の芯まで冷やされていく感覚により、俺はそこで意識を喪った
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