第52話 敵、襲来(その7)

 次にご主人様が意識を取り戻した時、同時に凄まじい快感を覚えた。

 そしていつの間にか全裸になっていた自分の身体の下で、肉感的な若い裸体が汗まみれで紅潮し蠢いていた。


「お、おい」


 慌てて離れようとしたが、直ぐに左腕を起き上がったB子が掴んだ。


「ちょ、ちょっと」

「らめぇ……やめなひで……」


 その焦点を失っていた瞳は完全に快楽におぼれていた。そしてそのままご主人様を押し倒し、馬乗りになって腰を振り始める。


「ま、まて――」


 事態が飲み込めずに驚くご主人様の唇をB子が即座に唇でふさぐ。


「駄目――もっとして――術を掛けたのは謝るから! もっと、もっと私を滅茶苦茶にして、ご主人様ぁぁ」


 その甘い喘ぎ声に、若いご主人様の理性はあっけなく弾けた。


「も、もうどうなっても知らんっ!」


 ご主人様はやけくそ気味にB子の背中を引き寄せた。


   *   *   *   *


 ご主人様は目を覚ました。

 あれからどれだけの時間が経ったか確かめようとしたが、巻いていた腕時計の場所さえ思い出せない。

 というか、何時の間に全裸になっていたのかすら曖昧であった。

 

「……今、何時だ」

「結界のせいで通常の時間では5分しか経ってません」


 ベッドの上で横たわる全裸のB子が答えた。

 ご主人様は頭を抱えながら身を起こした。


「……何でこんなことに」

「悪くはしないと言ったはずですよ」


 B子は意地悪そうに微笑む。そして少し顔を赤らめ、


「……まさか人如きに、本気で何度もイカされるとは思いもしなかったわ……不覚」

「あのなぁ」


 言い切る前にB子がご主人様の口をキスで塞いだ。


「……いったい何なんだアンタは」

「ご主人様のメイドのB子で、お嬢様のお目付役」

「そうじゃなくって……」


 ご主人様は思わず瞠った。それは一瞬の変貌であった。


「……猫耳に……尻尾ぉ?」

「こう見えても、400年生きてるの」


 猫耳に2本の尻尾を生やしたB子は、ニコリ、と微笑む。


「世間では化け猫とか猫又とか呼ばれているようだけど。――霊猫。冥府の霊獣よ」


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