前編

 俺は中学卒業して半年ニートをしていた。

 親から金をたかって、コンビニと家でパソやっている毎日。

 時間を無為にし続ける生活が、つまらなすぎて死にたくなっていたある日、自宅へ帰る途中運送トラックにひかれた。

 後ろからいきなりだったから、即死もいい所。

 

 でも、痛みなかったんだぜ。それだけでなんかお得感あったりしないか。

 次に目を覚ました瞬間、明らかに異世界のチュートリアルをしてくれるような素敵空間に大の字になって寝っころがっていた


「起きなさい、マエダタカシさん……マエダタカシかもしれない人」と、いつの間にか白銀の露出度高めなローブを着た、スタイルのいい超絶美少女があらわれる。


なぜか、右手に白髪ねぎ持ってるのがわけわからんかったが。

「かもしれなくもねぇよ、合ってるよ。ここは一体?」

「不幸にもトラックでひかれて死んだ方を、異世界に転生させたり生まれ変わらせたりする、そんな素敵空間かも」


 一瞬カチンとくる表現、どうもありがとう。

 どこにも風が吹いてないのに、ローブが揺れ胸元がチラチラ見える。

 ゲームで見たような亜麻色の髪に、パンのシール集めて手に入る陶器みたいにすべすべしたもち肌。抑え目なとび色の瞳。

 わりぃな、庶民派でよ。うまい例えが思い浮かばん。

 とにかく、ニートには刺激が強すぎる。


「異世界?」

「ええ、異世界ローナでは魔王アルファによって、大規模な虐殺が起こっている……かもです。その関係かもしれませんが、現在人が足らないのです。バランス調整のため、魔王アルファを討伐して欲しいかも。あ、もちろん、タダではないかも」


 えっ、なに、かも言わないと死んじゃう病気にでもかかってるの?

 ちょっとして、カモにネギだからとかですか。

 どうでもいい、さっさと俺を最強にして、異世界ローナとやらで、無双&酒池肉林ライフでも始めるか。


「願い事が一つ叶うんだろ。だったら、願いは一つ、俺を史上最強にしてくれ」


 関係ないが、どうして魔王倒すとか魔王倒せる機械とか兵器って、俺含む転生者は願わないのかな。

 まあいいか。


「どうして、それを……もう願いいっちゃっ」

「能書きはいい。早く異世界へ送ってくれ」

「あっ、ちょ……もう知らないかも」プクーとふくれっ面する女神。可愛い。


こうして俺は女神からまばゆい閃光を受け、再び意識を失った。


※※※


「あっ!やべぇ、今日週刊少年マンデーの発売日じゃん」

 って、もう俺異世界転生しちゃったし。

 はずかしい、いくら楽しみにしてると言っても声出して言うのは……メッチャ照れる。日々の習慣で二度寝した後、聞き覚えのある声に起こされる。


「マエダさーん。タカシさんかもしれない人」

 えっ、さっきの女神。

 あれ、俺宇宙(そら)に浮かんでる……はぁ、宇宙!?

 なんか光る膜みたいなものに女神と俺が包まれてる。


「タカシだよ。タカシタカシ言われると、クソババァのこと思い出すからやめろ」


 まあ、ババァやクソオヤジには、俺にかけてた学資保険でうはうはやってほしい……向こうのトラックの過失100%だし、保険も全額降りるだろう。

 親孝行できんかったからな。


「では、チャンたかさん。私的にはどうでもいいですが、チャンたかにはディフィカルトな問題があるかも」

「業界人でもないぞ、俺は。なんだよ、問題って……てか、ローナはどこなの?この宇宙みたいなのがローナなの」

「ローナは先ほど滅びました」


「はあ?どうして」

「あなたの大声で、星ごとローナはなくなりました」


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