ノウ・ノア・ノット〜known or not

ぱんにゃ

第1話

私は今日を楽しみに昨日ぐっすり眠った。そのおかげで今、物凄く目が冴えている。というか興奮している。

何が私をそう足らしめるかというと、一言で言えばゲームだ。TRPGだ。

TRPGを知らないという人の為に、一応の解説は書こうと思う。しかし以下の解説はあくまで外殻的なものに過ぎないという事を始めに述べる。私にとっては殻では無く中身が大切なのだ。


話を戻そう。

知っている人は読み飛ばして欲しい。

TRPGとはテーブルトーク・ロールプレイングゲームの略称だ。日本語に訳せば「雑談RPG」と言った所だろうか。

TRPGとは、RPGを雑談で進めていく事だ。

ドラ○エⅣがある。これはオムニバス形式だが、一つ一つの短編のキャラクターを誰かが操作できるとしたどうだろう。自分の活躍を見てもらい、他人の活躍を見て喜ぶ。最終章は、MO(複数プレイヤー参加型)RPGと化すのだ。楽しいに決まっている。

「雑談RPG」はそれをアナログで行うのである。


キミが操作する主人公が"ギガ○ード"を打つコマンドは存在しない。代わりにGMに魔法を打つことを宣言して描写をするのだ。

コンピータゲームにはない、何をしてもいい自由度。そしてプレイヤー同士の会話によってシナリオが爆笑必至の路線へと進んで行く。

TRPGの楽しさは、このリプレイを読んで伝えられれば良いと思う。



さて、外は中々の大吹雪。私は電車止まったら帰れないなーとか考えつつ、メンバーが集うのを待っていた。

今回はやるシステムは「ダブルクロス」。ヒューマンドラマとアクションが売りのTRPGだ。

シナリオの準備をしつつ、ソフトクリームを注文する。これは150円とお手頃価格の逸品だ。この商品の宣伝効果で今日のような休日はかなり賑わっている。

そんな所に、途中で落ち合ったのだろう、皆が来た。

今回のシナリオはGMを除いてPLが5名。

私の事は以降GMと、彼らの事は以降プレイヤーA〜Eと表記する。


GM「では、『ダブルクロス3rd』のセッションを始めたいと思います。じゃあキャラ製作から。大丈夫?」

一同「お願いしまーす」

プレイヤーA「細かいルールは分からないんで、教えてくんない?」

GM「えっ。いや、まぁ、大丈夫です!むしろ、知らない事を楽しんでいきましょー」


根拠もなく、大丈夫だろうと言った。

こういう事を何というか。答えは「匙を投げる」だ。TRPG的に言えば「賽を投げる」だ。


私「んじゃ、ルールブック出してー」

プレイヤーB「あっはい」


机に並べられたのはルルブ1・2、そして数多のサプリメント(追加データ本)。プレイヤーBはGMからサプリを借りて昨日キャラを作っていたのだ。


私「あざとーす。やっぱ多いなw今回は全データを使いまーす」

プレイヤーA「やったー!マジか(←分かってない)」

プレイヤーD「えっマジ⁈」


わかる人にはきちんとした動揺が走る。

具体的に言えば、最近出たTRとRWとステージ集以外だ。


その後、しばらく説明をした。もって来た、SW2.0リプレイ、『セーペントシリーズ』を見せながら。

つまり、ソード・ワールドの15レベルリプレイと同じ事をしようと伝えたのだ。

現環境の最強をプレイしようと伝えたのだ!


GM「勿論、ガチガチに考える必要はないよ。自分的に強いなーとか、カッコ良いなーってキャラを演じてくれればそれでいいと思う。ただ、自分のキャラが"データ的に"強ければ強いほど、滅茶苦茶な楽しさがあるということは保証できる」


各自、もって来たキャラを見直す。まぁ、足が止まってしまうのは良くない。GMは進めていく。


GM「シナリオのステージはA市、つまりこの街ね。で、200点の経験値あげるから『無茶苦茶強くて格好良いキャラ』を作って欲しいんだ」


プレイヤーE「……おうふ」


いま青い顔したのはTRPG歴が一番長いプレイヤー。こっちを怯えた目で見ている。

因みに、後に語ってくれたが、200点は少ないと感じたよう。確かに、"最強"を目指すにはまだ少ない。しかしキャンペーンシナリオとして続くので、最初に200は十分だろう。


プレイヤーC「面白そうwあと200点も使っていいんでしょ?」

GM「ええ勿論」


GMが笑顔になるにつれて、熟練のプレイヤーが眉を顰めて塾考体制に入る。中でもプレイヤーDとEはデータを隅々まで読むのな癖になっている。しかしマジのマンチキンではなくてルールミスの指摘とかよくしてくれる。だから結構ありがたくもある。


プレイヤーD「そういえばハンドアウトは?」

GM「あっ、そうだな。忘れてたメンゴ」


我が卓のハンドアウトは2枚存在し、1枚目は皆で共有するものだ。基本的なキャラの説明文とワークスや固定ロイスが記されている。

1枚目を見てこのキャラをやる、と決めたなら2枚目を見る事が出来る。そこで他人には教えられない情報を与えられるのだ。


GM「基本的に、PC番号が早い方ほど、主人公チックだからねー」



【ハンドアウト】

PC①

推奨ワークス:UGNチルドレン

固定ロイス:"破魂砕身ヴァイオレントフォルム"

説明:キーパーソン①。仲間を守る為に辛い役目を負うアタッカー。少し鬱かも。


PC②

推奨ワークス:レネゲイドビーイング

固定ロイス:"アイン"

説明:キーパーソン②。FHが造り出した兵器への最終手段となる予定。妨害キャラ。"プランナー"との関わりがある。


PC③

推奨ワークス:UGN日本支部エージェント

固定ロイス:PC②

説明:中枢評議会アクシズの暴走を防ぐため、霧谷と活動している良識人。結構嫌われ者かも。A市に派遣(左遷?)された。


PC④

推奨ワークス:UGN支部長

固定ロイス:"霧隠インヴィジブル"

説明:UGNに単身乗り込んで来た少女を保護する。FHの陰謀を知り、それを止めるために奔走する人。


PC⑤

推奨ワークス:高校生

固定ロイス:親友

説明:最近覚醒したオーヴァード。UGNと協力関係。



一同は、紙を見下ろしながら、唸っている。

プレイヤーCとDは特に悩んでいるようだ。

話は、「誰が主人公役をやるか」に移る。


プレイヤーA「ここはまぁ、慣れてる人達にw」

プレイヤーC&D「えっ?」


少し喜んでるような気もする。


プレイヤーC「いやいや、Aは今回TRPG初めてでしょ?やってみたら?」

プレイヤーD「いや、俺はなんかPC②に呼ばれてる気がする」


なんだそれは。


プレイヤーD「他にPC②やりたい奴いないか?」


あたりは静まり返っている。


GM「んじゃ、PC②はDの物になりました」

プレイヤーC「競りかよw」

プレイヤーB「僕はPC④がいいなぁ(チラーミィ)」


あたりは静まり返っている。

そんな凍えるような空気をぶち壊してくれたのはプレイヤーAだった。


プレイヤーA「俺、PC⑤がいい!」

GM「(えぇ。見た目、脇役っぽいのに?)」

プレイヤーA「設定と噛み合いすぎw!」

プレイヤーD「本人がいいなら……。俺はアレだな!プランナーだな!」


プレイヤーE「……おう。それオバサンだぞ」

GM「言うな!見た目だけならロリなんだから!」

プレイヤーD「知っとるわーい。それが良いんじゃろ」


その後、説明文をじっくり再読。

そしてオッケーサイン。

可愛いは正義、らしい。


PC①はルール処理が難しい、という事を伝えると、その後はあっさり決まった。

プレイヤーE→PC①

プレイヤーD→PC②

プレイヤーC→PC③

プレイヤーB→PC④

プレイヤーA→PC⑤


あら綺麗。


GM「じゃあ、裏見ていいよ。でも恨みっこなしねw」

PC④「www」


渾身のギャグに笑ってくれたのはPC④だけであった。

もしかして、内容が衝撃的でスルーされたのだろうか。



GM「えーっとー。いろいろ注意点書いてあるだろうから、ソコ気をつけて。じゃ、キャラ作ってね」

PC①「GM、やっぱあんた鬼や」


さて、なんのことやら。

あ、大事なこと忘れてた。


GM「今回、特別ルールがありますんで、聞いてください。"E天突破卓"を観ている人はわかると思いますが、データの一部変更です」

PC②「おっけー。《電磁反応装甲》ねw」


このエフェクトは「タイミング:オート」で「HPダメージを10減らす(最低0)」のですが、重複可能なのです。しかし一回で侵蝕率が10上がるのでPCにはとても使えません。

今回は「同タイミングで重複可能なエフェクトの侵食率上昇は一回で済ます」というルールを設けます。

これにより、《現実改変》なども使い易くなりました。


GM「それと、Dロイス:造られし魔バイオニックデーモンを通常ステージでも取得、使用可能とします」


一同ざわつく。


PC③「なして?」

GM「この世界線にも、プロジェクトアダムカドモンあるやん。その実験体はこのDロイスを持てるようにしたんだ」

PC②「……ふーん?」


と、まだ忘れていることがあった。


GM「まだあったわw今回、最終侵食率が150ぐらいだと考えています。Eロイスも沢山使ってるから、120%エフェクトもとって構いません。まぁ、程度は考えてね」

PC①「それでこそ、だな」


特筆すべき点はこのぐらいでしょうか。このルールを事前に承知ください。

では、続けていきます。



飯を食べながら、PC①がこんな事を言い出した。


PC①「お前、リプレイ書いてるらしいじゃん。今回のってそのネタなのか?」

GM「バレたか。そうそう。E天突破卓ってのがあってさ。モロ影響されたw」

PC②&④「ほう⁈」


この2人は小説書いてるから、私が書いたリプレイが気になっているのかもしれない。タイトルを教えといた。

因みに"なろう"に投稿していた。


飯を片付けてもらい、キャラ製作が再開する。


PC③「GM、Dロイスの事だけどさ」

GM「おっ。最初はそれから決めるのか」

PC③「あぁ。3つ、取っていい?」


一同、爆笑。暫く、GMもポカンとしてた。

今回のシナリオは、侵食値をかなり上げさせるつもりだった。3つは戻れなくなる可能性があるので、必死で宥めていく。


GM「いやいやいや、待て待て。なんでそんな必要なんだ」

PC③「全ては格好良さのため!」


これを言われると厳しい。


PC③「ここだけの話、無いと困るんだ」


PC③はトライブリードの支援がやりたいみたいだ。その為、業師スペシャリストは必須だし、起源種もデメリットなく使えるから欲しいとの事。


戻れない可能性も伝えると、調和者ハーモナイザーを諦めて2つになった。


PC⑤は予想どおりに頭を抱えていた。ぺらぺらとルールセクションを眺めながら此方にちらちらと視線を送ってくる。


GM「ほいほい。どこが分からんの?」

PC⑤「ここなんだよなぁ」


指で突いているのは「エフェクトの組み合わせ」についてだった。恐らく、初心者には皆ここが一番難しい。


GM「あぁwwそこね」

PC②「組み合わせたいエフェクトどれとどれ?」

「これなんだよなぁw」


なんだ、その態度w


PC②「キャマ×ブラムかー。白兵特化だな。滅茶苦茶ダイス増えそう。」

PC⑤「そうなんだよなぁw」

GM「もういいわw」

PC⑤「いてっ」


ダイス云々は《完全獣化》と《始祖の血統》を意識しての発言だ。


PC②「あれ?《ハンティングスタイル》は?」

PC⑤「え?」


PC⑤が急いでページをめくる。《ハンティングスタイル》はキュマイラのエフェクトだ。


PC⑤「いや、これいる?マイナーで組み合わせ出来るけど」

PC②「いやいやw《完全獣化》して、《究極獣化》するならどうやって戦闘移動するんだよ」

PC⑤「あ、そっかwマイナーはそれに使われるのか」

PC④「行動力0になるんだから、《セントールの脚》入れとけ」


いい感じに纏まりそうだ。流石ルールをよく読んでるだけある。

そんなこんなでシナリオの構成を眺めながら終わるのを待つ。


時は流れた。


PC①「終わり。何これ、疲れた」

GM「そりゃそうだわ‼︎ナゲェ!」


もう、帰らなければいけない時間帯になっていた。


PC⑤「おいおい、もうヤバイんじゃない?」

PC①「いや大丈夫だって。サプリ貸しちゃうんだから今作んねーと」

PC③「あぁぁ、スマソ」


焦りつつあるメンバー。まだ半分は完成していないが、これ以上はいけない。切り上げよう。

驚愕だ。SW2.0の15レベルプレイ以降初めての、キャラ製作1日潰れ。


吹き付ける雪が冷たかった。

しかし笑いながら帰路に着いた。


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