第35話 キノコの報酬
結局、僕のやったマッシュポークが1番損傷がひどいと言う事で、夕飯の食材として使った。
ハミングバードは強いのだが、フルオートはよく考えて使おう。
その後、予定通りに夕飯を食べ、交代で見張りをして、朝一でレビストフへと戻った。
こうして、僕達の初クエストは幕を閉じたのだった。
町に着いたら、その足でギルドを目指す。
朝早い時間だと言うのに、相変わらずギルドには冒険者達がひしめき合っている。他に行く所が無いのだろうか?
「あら? イズミ達じゃない。クエストの帰り?」
クエストボードの前でたむろっている冒険者達を眺めていると、スクラナさんから声を掛けられた。
どうやらこれから勤務の様で、今、出勤して来たところなのだと言う。
僕はクエスト帰りで、これからその報告をする旨を説明すると、そのままスクラナさんが処理をしてくれる事になった。
自分は準備をしてくるから、先に納品を済ませておけと御達しが出たので、買取カウンターへと向かう。
買取カウンターは、クエスト品の納品からモンスターの買取まで一手に引き受けてくれるカウンターで、早くて安心出来る最高品質のカウンターだと言われている。
今回は、キノコの納品とウサギとブタの買取という事で、カウンターでの対応となった。これが大型モンスターの納品や買取になると、一旦外に出て裏にある倉庫へと行かなければならないそうだ。
まぁカウンターに置けない物はしょうがないよね。
受領書と番号札をもらうと、今度はそれを持ってスクラナさんが待つ受注カウンターへと行く。
ここで受領書と番号札を出すと、お金が受け取れるのである。
「はいはーい、お待たせ。今回のクエストだけど、ゲンキダケ10個の納品ね。
それでイズミ達は……42個!? 1日で? ゲンキダケって見つけづらいのよ? ゲンキナイダケって言う毒キノコの方が数が多いし、見つけやすいから初心者はほとんどそっちを持って来ちゃうのに……」
どうやら、やらかした様だ。【鑑定】と【探知】のコンボは強力過ぎるから、次から自重しよう。次からね。
「それで、え~とまずゲンキダケ10個の納品で基本報酬の300Gでしょう。追加で10個につき100Gだから、300Gの追加ね。2個余っちゃったけど、どうする? ギルドで買上げとなると1個5Gだけど」
まぁ2個だけ貰っても使い道無いし、そのまま売る事にした。
そして、残りのウサギ6羽とブタ2匹の値段はウサギが1羽に尽き50G、ブタが1匹200Gで売れた。
合計で、1610Gとなった。
「初心者で、最初のクエストで1000G越えって……イズミ達って本当に優秀だったのね」
スクラナさんが感心した様に、頷きながらお金を渡してくれる。トレーには銀貨が16枚と銅貨が10枚乗っていた。
僕は空の革袋に全て入れると、アイテムポーチに素早く仕舞い込んだ。
僕はその後2、3世間話しをしてからスクラナさんと別れ、2人が待つテーブルへと戻った。
「換金して来たよ~」
「お疲れ、いずんちゅ」
「いくらになった?」
僕は銀貨の入った袋をテーブルの上に置く。
2人が袋の中を確認したタイミングで話しかける。
「初心者にしては優秀な成績らしいよ」
「1610Gか……端数は除いて、生活費を入れて4等分すれば1人頭400Gか」
1日キノコ集めて40000円か、とんだ高給取りだね。命懸けだけど。
「ま、そこから借金の返済分を引けばいくらも残らないだろうがな」
そうだった。借金持ちだったね……。
スルトとロック爺の工房、それに家具屋となると100Gずつ払ったとして、残りは100Gか。
まぁ生活費は別に取ってあるから食いっぱぐれる事は無いからいいか。
全員の了承を受け、中身の銀貨を4枚づつ分けた。端数はそのまま生活費へと組み込まれる。
そして、僕達はギルドを後にした。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
自宅へ戻り、風呂に入るなどして休息を取った後、僕達は借金返済の為、また出掛けた。
ひなぞーはスルトの屋敷に、武さんは家具屋に、そして僕はロック爺の工房へとそれぞれ出発する。
ロック爺の工房へと辿り着いた僕は、早速ロック爺を呼び出してもらう。店先にいた店員さんでもよかったのだが、ここは手渡しの方が安心出来る。
「何だ小娘か。シルノなら奥だぞ?」
「今日は別件ですよ?」
「ならシュティーアか? あいつも奥に引っ込んだまま出てこんな」
ここの工房、引き篭もりが多くないですか? まぁ店主のロック爺がそうなのだから、もう手遅れかもしれないけどね。
僕は借金の返済に来た旨を伝え、ロック爺に300Gを支払った。1人100Gだが、払わないよりはマシだ。
「ふむ、確かに。今、領収書を書くから待っとれ」
奥へと引っ込むロック爺を見送ると、代わりにシルノとシュティーアさんが顔を出して来た。
何となく来ているっぽい気配がしたとの事。僕はいったい何なんだ?
ロック爺から領収書を受け取ると、そのまま女子会と言う事でシルノの作業場へと移動した。僕は女子じゃないのだが……参加してもいいのだろうか?
お茶を飲み、しばらく話しをすると、ふと疑問に思ったことがあったので2人に相談する事にした。
「この【探知】のスキルって凄いんだね」
「そうっすね、有能なスキルっすよね~」
「首都の魔文字専門家が発見したスキルだと言われているね」
「光って教えてくれるなんてね~どう言う原理なんだろうね~」
シルノとシュティーアさんの動きが止まった。
おや? 僕は何か間違えたかな?
「イズミちゃん、確かに【探知】は有能なスキルだが、何となくある方向が解るだけで、別に光ったりはしないよ」
「そうっすよ。そんな事になっていたら冒険者以外の人でも全員ピアスを着けるっすよ」
なんと、普通の人はあの光は見えない様だ。
と言う事は、あの光景は僕限定って事なのかな?
「ふむ、イズミちゃんが嘘をついている様には見えないが……ひとつテストをしてみようか」
シュティーアさんが立ち上がると僕の後ろに立つ。すらっと細身の長身なのだが、出るところは出て、引っ込むところは引っ込んでいるまさにパーフェクトボディ。さらに茶髪のショートヘアが似合う女優顔負けの美人さん。
これでなんとシュティーアさんは人妻なのだと言う。旦那さんを見てみたいよ、何処の幸せ者だ?
そんなシュティーアさんが、後ろから乗り出す様に手を伸ばす。そうするとどうなるか……。
答えは簡単で、僕の頭は女性の胸に標準装備されている、幸せと言う名の柔らかいクッションに挟まれる事になる。
そう、僕は今天国に居る!!
「シルノ、このピアスを部屋の何処かに隠してくれるかい? イズミちゃんの目はボクが隠しておくから」
「……わかったっす」
何処か拗ねた様なシルノの姿が一瞬見えたのだが、直ぐにシュティーアさんの手によって視界が塞がれてしまった。
こ……ここまま死んでもいいかも……。
そんな事を普通に考えられるくらい居心地がいい。このクッションを好きな様に扱えるシュティーアさんの旦那さんに殺意を抱く程だ。
「隠したっすよ」
そんな至福の時間も、シルノの一言で終わりを告げる。
もう少し時間が掛かっても全然構わないんだぜ?
「イズミさん?」
全てを見透かした様なシルノの問いかけに、僕は慌ててスキルを発動させる。
「ウチだって……」
「大丈夫さ、シルノだって直ぐだよ」
何が直ぐなのだろうか?
疑問に思ったが、これ以上は踏み込んではいけないと本能が感じ、僕はピアス探しに集中する。
と言ってもそんなに広くない作業場だ。ピアスは直ぐに見つける事が出来た。
「……凄いっす、本当に直ぐに見つけたっす」
「これは……少し調べた方がいいかもね。面白くなってきた」
ピアスを片手に持つ僕を他所に、2人は怪しく笑っているのだった。
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