第31話 スキル
「さて皆様、今回の報酬は如何でしたか? え? 嬉しかった? いや~そう言ってもらえると用意した甲斐がありました。
さて、次はスキルについてです。ギルドカードをご準備下さい。……いいですか? 用意できましたでしょうか? それでは、スキルの欄に指を乗せて下さい。いいですか、私が『どうぞ』と言うまで指を乗せたままにして下さいね」
勝手に話し始める大神さん。何か一言言ってやろうかと思ったけど、これは録音だと思い出し諦めた。
僕達は自分のカードを手に取ると、言われた通りスキルと書かれた上に指を乗せる。
すると、まるで見て居るかの様にラジカセから『どうぞ』と聞こえてくる。
特に光ったり、音が鳴ったりと言った反応は出なかったので、僕達は互いに見合い首を傾げる。
「これで皆様のギルドカードには、今習得している全てのスキルが表記されているはずです。これから本格的に活動が始まると思いますので、ご自分が何を出来るのかご確認下さい」
スキル:魔砲師・反動無効•鷹の目•魔力回復速度上昇(特大)•双剣(中級)•身軽•器用さ上昇(特大)•格闘(中級)•冒険者
確かに、今まで表記されていた数の倍近くのスキルが表記されている。
さらに大神さんの説明が続く。
まず、最初の4つ。
これは、初期設定で設定したメイン武器のスキルになる。これだけでも1流の冒険者になれる。
次の3つはサブ武器のスキル。
僕の場合、片手剣から双剣に変更してあるが、セット内容の変更は無いそうだ。
僕はさらにこっちに来てから2つのスキルが追加されている。
次に中級や特大と言った表記について。
級表記は全部で5段階あり、下から、
初級•中級•上級•特級•最上級となる。
最上級は表記名が変わるため、最上級とは表記されないとの事。
僕のスキルでは『魔砲師』がこれに該当する。
効果を表す表記は4段階あり、小•中•大•特大となる。
詳しいスキル効果は、スキルの文字に触れれば自動的に教えてくれると言う。誰がと言っていなかったので、ナビちゃんか大神さんが教えてくれるのだろう。
「さて皆様、ご自分のスキルは確認されましたでしょうか? もちろん、これからスキルが成長する事もありますので、是非とも頑張って頂きたいと思います」
これからどう成長するのか……楽しみでしょうがない。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「さて、最後になりますが皆様次のクエストです。次のクエストは、
Cランクに昇格すること。
にしましょう。大丈夫です、皆様が真面目に働けばCランクなんて直ぐですよ。
それでは次の機会までお元気で」
その言葉を最後に、ブツリとラジカセからの音声は消えた。
「それでは皆様最後になりましたがこちらが特別製のアイテムポーチと護身用のお護りになります」
もはや何が出て来ても驚かない自信がある。
ナビちゃんのポケットから出てきた物は、ギルドから貰ったアイテムポーチの色違いと神社などで売っている普通のお守りだった。
「まずアイテムポーチですがこちらはギルドで渡しているものの強化版になります。生物以外のモノが種類数量関係なく無制限に入ります」
真っ赤なポーチを手に取り、ナビちゃんが説明してくれる。
てか無制限ってさらりと言っているけど、凄い事だよね?
「凄いな……」
ひなぞーも感心しながら腰に装着している。
「次にお守りですがこちらは皆様が受けるダメージを一定量肩代わりするモノになります。
中にはこの様に人型の紙が入っておりまして正常なら白色でダメージを負う毎に黒く変色します。
また保有している魔力が減りますと赤色に変色します」
ふむふむ、ダメージを負うと黒色に、魔力が減ると赤色になると……。
「真っ黒になったらもうダメなのか?」
武さんが手を挙げて質問をする。意外と律儀だ。
「蓄積されたダメージはこちらの台座に置く事でリセットします。また魔力の補充も合わせて行いますのでクエストから帰られたらお守りごとこの台座に置く事をお勧めします」
なるほどね。まぁでもダメージを負わない事が大事だね。
ナビちゃんから手渡されたお守りに、ふと目を向ける。そこには……
安産祈願
と刺繍されていた。
あれ? おかしいな。目が悪くなったかな?
僕は裏返したり、逆さまにして見たりとアレコレといじるが、真ん中に刺繍された文字は変わらない。
「ナビちゃん、これ『安産祈願』って書いてあるけど……」
「はい書いてありますね」
「なんで安産?」
「和泉様にはこれが1番かと思いまして」
「なんで!? 僕は男だよ? 子供は産ませる方で産む方じゃないよ!!」
何さらりと言ってくれるんだい? この子は。
こんな見た目になったけど、相棒は正常に動作しているんだよ?
「和泉様昔の人は言いました。『それはそれこれはこれ』と」
初めて見るナビちゃんの感情ある顔がドヤ顔って……いやいや、なにドヤ顔してるの?
「それでは皆様次の機会まで御機嫌よう」
「ちょまっ!? ナビちゃん!? 待ってよ! ねぇ! ナビちゃ~~~~ん」
僕の叫び声も虚しく、ナビちゃんは消えてしまった。
結局僕は謎の安産祈願のお守りと赤色のアイテムポーチ、そして漢和大辞典を手に入れたのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
それから僕達は、装備が出来るまで思い思いに過ごすことにした。
ひなぞーは船の操縦の練習に、武さんは町の探索とかしていたそうだ。
僕はと言えば、シルノの所に入り浸り、魔文字について勉強していた。
シルノは僕の防具を作るので忙しかった為、魔文字の専門家の人を紹介して貰ったのだった。
シュティーアさんと言う20代前半のお姉さんで、ロック爺の工房で1番の魔文字細工師なのだと言う。
最初は、自分の技術を教える事に難色を示していたが、僕があるものを提供すると約束すると、渋々だが教えてくれた。
僕が提供したもの、それは……、
魔力だ。
魔力は、魔法石や魔文字を発動させるのに絶対必要なもので、魔砲師である僕は普通の人よりも魔力保有量が多い。そこに魔力回復速度上昇のスキルが付いているものだから他の人が実験するよりも明らかに効率がいいのだ。
最初は渋々だったシュティーアさんも、予想以上に実験出来るものだから、2日目には上機嫌で教えてくれる様になった。
魔文字の細工方法を教えて貰えたおかげで、ハミングバードのマガジンを強化する事が出来たし、借家の風呂とトイレも修理する事が出来た。
そして、何よりクエスト報酬で貰えた漢和大辞典が思いの外大活躍した。
まさかこの為に? と思ってしまう位の大活躍だ。恐るべし大神さんとナビちゃん……。
そして注文をしてから4日目。予定より1日遅れてロック爺より完成の知らせが届いたのだった。
家から超特急で工房に向かうと、そこにはスルトまでもが来ていた。
「君たちの装備が出来たと聞いてな。見に来たぞ」
まぁ出資した身では、装備が気になっても仕方がないか。
ロック爺の指示で、僕はシルノの作業場へ、残りの2人はロック爺の作業場へと移動した。
「これがイズミさんの装備っす!」
シルノの作業場に着くと、1体だけあった鎧掛けに真新しい装備が飾ってあった。
「それじゃ早速着ながら説明するっすよ」
シルノは、ウキウキしながら鎧掛けから装備を外していく。
まず、厚手の生地で作られた布の服を着込む。普段着よりも丈夫な服だと思う。
「上着が長袖なのはわかるけど、どうしてボトムがショートパンツなの?」
一応タイツらしきものは履いているが、ここまで丈が短いパンツは小学生以来だ。
「可愛くないっすか?」
装備に可愛さは求めてないっす……。
次に革製の胸当と膝下まで丈のあるロングブーツ、それにロウアーカノンを付け最後にグローブを装着すれば完成だ。
「イズミさんは魔砲師と言う事なので、機動力を確保する為に、必要最低限の装備にしたっす」
なるほど、確かにガチガチに固めるよりは動きやすい。
「あ、これを忘れていたっす」
シルノは1本のガンベルトを手渡してきた。腰に回すと、左右に3つづつ収納出来るマガジンポーチが
付いていた。
「これは……」
「イズミさんのマガジンを収納するポーチっす。サイズはぴったしのはずっすよ。あと、ベルトの部分にアイテムポーチを付ければ完璧っすね」
シルノに言われた通り、右側にギルドから貰ったポーチを、左側には大神さんから貰った赤いポーチを装備した。
「ありがとうシルノ! すっごく使いやすいよ!」
「喜んで貰えて何よりっす。あとこの革紐はオマケっす。さあ皆んなの所に戻るっすよ」
革紐は、スリングベルトの代わりといったところだろう。
ハミングバードに括り付け長さを調整する。
これで準備は万端だ。
僕は、意気揚々とカウンターへと歩いていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます