名探偵という名の流儀〜PRIDE OF DETECTIVE〜
西木 草成
第一話 壊れた出会い
人とは壊れている生き物だ、この地球上で唯一、無利益で、迷惑で、自分勝手な争いをしている、それでもって知性なんてものを兼ね備えているもんだからより厄介なもんだ、しかしまた、その壊れた人間の安全のために、誰かが尻拭いをしなくてはならない、少なくとも俺はそう思っているそして自分はその尻拭いをする側だ。
「おい!遅いぞ、さっさと歩け!」
「歩くのが早いんですよ!村上さんが!」
「早いのなんて当たり前だろ!人が待ってんだよ!人が!」
「はあ〜」
繁華街は夜にもかかわらず、街灯の光や、ネオン、デジタル掲示板なんかで昼みたいに明るい、いったいこの光のために国の税金はどれほど使われているのかと考えるとゾッとするが、特にこの辺はガラの良くない人間が多い、売春、ヤクザ、スナックの客引きなどがチラホラと見かける、そしてそんな溜まり場の少し離れた街の光の届かない一角に明かりがひときわ嫌な意味で目立っている光が点滅しているのが遠目からでも良く見えた。
「あそこみたいですね・・・」
「ったくよ、こんなところでよくやるぜ」
その明かりを中心にたくさんの人が集まり団子になっている、まあ言えば野次馬だ。
「ハイ下がって!これ以上近づかないように!」
青の制服を着た男性が誘導棒をもって近づく人の波を押しかえす、しかしその中を二人は平然と進んでいく。
「ハイ下がって!、ほら!、あんたも下がって!」
「俺たちはこういうもので来ているんだが」
「!?」
二人はコートの内ポケットに手を入れ小さな手帳を男の前に提示する。
「警視庁捜査一課 村上 龍一だ」
「同じく捜査一課 渡辺 純です」
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その場所は繁華街の少しはずれの暗がりの路地だ、繁華街も少し離れればこんなに暗くなるんだなあ、と、思って歩いていると隣で村上さんが。
「鑑識係、仏さんは?」
「ええ・・・、まだ個人情報を特定できていませんが、被害者は女性、年齢は20代前後なんですがその・・・」
「ん?」
「それが一人ではなくて・・・」
「どういうことだ?」
「まあ、行けばわかると思います」
そこで俺が気になっていることを質問する。
「その・・・死因は」
俺が質問すると少しあっけにとられたらしいが、すぐに質問に答える。
「え〜、全員分の死因は特定していませんが、女性の死因はおそらく大量出血のショック死だと思われます」
となるとかなりの血が流れ出たということらしい、想像したらかなり憂鬱だな。
「あの・・・すみません」
「はい?」
鑑識のおっさんが俺の顔を不審そうな顔で覗き込んでいる。
「え〜、その、初めて見る顔なんですが、お名前は?」
「あ、申し訳ございません、私この春から捜査一課に配属になった渡辺 純と申します」
答えると鑑識のおっさんが少し考える仕草をして、そしてハッとした表情で。
「渡辺さん、てことはあの渡辺さんの息子さん?」
「ええ・・・、父がお世話になりました」
「どうりで少し面影が・・あっ、すみませんね、こんな話を」
「いえ、いいんです」
そうすると痺れを切らせた村山さんがとうとうイライラし始めた。
「おいっ、世間話はそのくらいにしてさっさと現場に案内してくれないか?」
「あっ、すみませんどうぞこちらへ」
少し先に進むとそこに暗がりの中、ライトに照らされたブルーシートが張られている。
「この奥になります、ただ・・・」
「ん?」
「かなりひどいですよ?」
そう言ってめくったブルーシートの先は
地獄だった。
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「ウッ!」
「おい、大丈夫か?」
「すみません、ここでは戻さないでくださいよ」
ハア・・・、湧き上がる吐き気をどうにか抑え、目の前の光景にもう一度視線を戻す、狭い建物の間の壁には所狭しと大量の血しぶき、そのほとんどが人としての原型をとどめておらず、腕のないものや、頭が潰れているもの、胴体が半分になっているものがある、人とはここまで壊れてしまうのか?
「ウッ!」
「ったく、ひでえな、発見者が気の毒だぜ」
「発見者は、この近くの会社に勤める、本田 光一、32歳で今、署の方で事情聴取を行っています」
少なくとも、一週間は夢で見続ける光景だな。
「この状況を見てわかるかと思いますが、遺体はどれもが損傷が激しく、なかなか外的な特徴を挙げるのが難しくて・・・」
「それでこの女性の仏さんてわけか・・・」
なるほど女性は他の遺体に比べれば一番マシな姿をしている、他の遺体に比べればだ。
「正直な話、監察医に解剖してもらわなきゃわからないですが、体をかなり強い力で切断されたものと思われて・・・」
「言われなくともわかる」
村上さんは遺体の前で合掌を行い、俺もそれに習って同じく合掌をして前へと進む。
????????????????????????????????????
現場検証、と言われても何から手をつけていいかわからない、それだけここが荒れている、隣の村上さんも同じようだ。
「・・・どうしますか」
「どうしますかって言ってもなあ・・・、遺体は解剖に回さなきゃわからんし、それに周りが血だらけでこれ以上近づくと現場を荒らすしなぁ・・・」
ったく、こんな事件は初めてだぜ、とつぶやきながら村上さんは頭をかく、しかしこの現場を見て思ったことがある。
この人数の多さは何だ?
説明した通り女性の遺体の他には確認するだけでも明らかに違う種類の死体がある。
なぜだ?
現場は狭く建物で壁ができている細い道だ、こんなところに来る理由なんてあるのか?
何か他にも何か引っかかるような・・・
「おい、大丈夫か?」
「あ、大丈夫です、少し考え事を」
「よくこんな中で考えられるな・・・」
「村上さんはなんか分かりましたか?」
「いやさっぱしだ、もうわけがわからん」
そんな会話をしているとおもむろに外が騒がしい、また野次馬が騒いでるのか何ならこの光景を見して、二度とそんな気が起きないようにしてやりたい。
しかし、どうも何か騒がしいというか、何か言い争っているような・・・、そんな気がした、隣を見れば村上さんもそんな気がするらしい。
「・・・少し行ってみますか?」
「ああ、でもなんか誰が言い争っているか何となくわかる気がするな」
「?」
何だろうか、野次馬の常連か?、いやそもそも常連なんているのか?だとしたら村上さんの知り合いで血気盛んな人でもいるんだろうか?
そんなことを考えて歩いていると薄暗く狭いところからだんだんと視界が開けていくと、出口でやはり誰かが先ほどの警備員ともめている、見れば、女性?
「ですから!ここは関係者以外立ち入り禁止だと、何度言ったらわかるんですか!
「あなたこそ何度言ったらわかるんですか!私はここの担当者に呼ばれてここにきたんです!関係者に合わせてもらえば・・・!」
ん?、外人?、なんで?、それにここの担当者って村上さんだよな・・・、あっ、こっちに気づいた。
「龍一?、はあ〜、やっときた、説明してください!あなたに呼ばれてきたって」
「龍一捜査官、それは本当ですか!」
「はあ〜・・・本当だ、もう下がっていいぞ、というかお前はいきなり名前で呼ぶなって何度言ったらわかるんだ!」
「めんどくさい!」
「??」
・・・まったく状況を飲み込めない、この外人は誰なんだ?見た感じ、長いブロンドの髪をしているがまったくどこの国の人間なのかわからない、鼻は高く、目は凛としていて、大人な美人かな?、年齢は20代前半といったところか。
「あの、すみません・・・、この方は誰ですか?」
「ああ、そうだ、お前は初めて会うよな、こいつは・・・」
紹介する前にその外人が一歩前に出てこっちの目を合わせ口を開く。
「
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