ティータイム

愛知川香良洲/えちから

第1話

「それで、話を聞かせてもらおうかしら」

「ま、まあ僕はその、うん」

 この前のことで、私は彼に呼び出された。とある駅前にある、テレビ放送局二階のフリースペースに設けられたカフェ。私達の高校の近くにあったのでよく立ち寄っていた所だ。

 彼はなかなか、話を切り出さない。

「と、とりあえず何か飲もうか」

 まあ、すぐには切り出せないか。

「おごってくれる?」

「あ、うん、おごるよ」

 私はウェイターを呼んで、よく口にする紅茶の名前を告げる。彼はアイスコーヒー。高校の時、定番にしていたオーダーだ。

 彼はいつまでも話を始めようとしなかったので、私から聞くことにした。

「それで、この前はどうしてあんなことしてたの?」

「それは、その、友達が、ね」

「友達が、どうしたの?」

「友達が、一緒に行こうって。それで、まあ、あの場所にいたというか」

「あの子と一緒にいたことと友達と、何の関係があるのかしら?」

 彼は黙る。なるほど、友達とやらは無関係と理解していいのよね。あの場にはそんな人物がいなかった訳だし。

「あの子ね、私の昔からの知り合いなのよ? だから色々聞き出した」

 彼はそれを聞いて驚いた様子を見せる。そうね、私も驚いたわ。あの子と彼が一緒にいるのを見た時は。

 あの子については、悪い噂しか最近は聞かなかった。だからあの子と一緒に出掛けたり、ネット上でさえやり取りをすることはほとんど無くなっていた訳だけど。

「全部教えてもらったから、ここで言わなくてもいいわよ?」

 本当は両方の話を聞くのが筋なんだろうけど、恐らく彼の口からは言い訳しか出てこないだろうから。それならば、聞かない方がいい。

「お待たせしました、ご注文の×××××とアイスコーヒーになります」

 ウェイターがティーカップを私の前に置く。一口、口をつけ

「とりあえず、ティータイムを楽しみましょ?」

 まあ、彼にとっては楽しめる場じゃないかもしれないけど。そう感じながら、私は二口目をつける。……今日はまあまあの味かな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る