49話「ロリへの愛は世界を救うか?㉑~苦しみの魔王④~」

「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!ブラドぉぉぉぉぉ!なぜだぁぁぁぁ!なぜぇぇぇぇぇ!同化を拒否するぅぅぅぅ!」


……俺は目を開けた。地下空間の灰色の壁が見える。大きな氷の塊が苦しみ、悲鳴をあげていた。

苦しみの魔王だ。こいつの個体名なんぞ知らんが強大な魂の力を感じる。普通の魔法では表面に傷しか付かないだろう。

だから、今は少しでも時間を稼ぎ、殺戮の魔王の力を借りた魔法を発動させる。それしか勝機はない。

遮断装置がぶっ壊れている今なら、力を借りれるはずだ。魔力が絶望的に足りないという問題はあるが、それは別の手段で補えば良い。

でも……さすがにブラドさんの魂が魔王の中で暴れていても、そんなに時間を稼げないと思うから、俺は別の呪文を唱えた――


「精神破壊波(マインドクラッシャー)!」


魂を傷つける光を収束するようにカスタマイズして、魔王の顔にぶち込む。魂が巨大すぎて大したダメージにはならないだろうが、タンスに小指をぶつけた程度のダメージはあって欲しい。


「ぐあぁぁぁぁぁぁぁ!家畜ぅぅぅぅ!あとで後悔するくらい苦しめて食べてやるぅぅぅ!家畜ごときがこの僕にぃぃぃぃぃ!攻撃しても良いと思っているのかぁぁぁぁぁぁ!」


頑丈な化物め。お前に返事なんて返してやらない。俺は床に転がっている白真珠を見つけた。急いで駆け寄って、その小さい体を抱き起こす。俺が愛する彼女は、とても疲れてヘトヘトな顔をしていた。肉体にはダメージはないが、精神の方がボロボロなのかもしれない。どことなく汗臭い。


「大丈夫か!?白真珠っ!」


「……お師様……拷問って結構痛いですね……なんか……ミキサーに放り込まれてイターイイターイでした……食品に加工されて、食われて……家畜って辛いですね……」


「……あの糞魔王っ!そんな酷い夢を見せたのか!」


「お師様……お祖父様を殺して助けてあげてください……きっと、お祖父様はこんな事をしたくなかったはずなんです……。お願いです……たしか……キスをすると……魔力を共有できるとか……言ってましたよね……あれって本当の事です……よね……?」


「……キスしてもいいのか?」一応、俺は聞き返した。


「僕の初めて……お師様にあげます……あと、そうですね……白真珠は長いから、白って呼んでくれると嬉しいです……どうかお祖父様を助けてあげてください……殺す事でしか救えない人間がきっといて……それがお祖父様なんです……」


「わかった。白。お前の初めてを貰うぞ」


時間がないから、俺は白真珠……いや白の唇にいきなり口と口を合わせた。犯罪的な行為だ。やわらかい唇の感触がこの娘を守ってやりたいという気持ちを起こさせてくれる。

それと同時に――白の膨大な魔力が、俺の身体に流れ込み共有される。この魔力量なら、どんな魔法も威力が激増する事は間違いなし。

今まで魔力量が足りない関係で、俺一人じゃ発動する事すらできなかった殺戮の魔王の魔法を……俺はようやく使える。

正直、この魔法は効果が異常すぎて、どんな結末を世界に齎すのか分からない。

下手したら、今以上に状況が悪化する可能性もあるだろうが、苦しみの魔王を倒し、好きな女の子を守るにはこれしかないのだ。俺は白を守る英雄になりたい。


「貴様らぁぁぁぁぁ!もう一度、夢の世界に閉じ込めてやるぅぅぅぅ!次はもっともっと凄い地獄を見せてやるぅぅぅ!家畜ぅぅぅぅぅ!」


怒りで叫びまくる魔王の中で、ブラドさんが暴れてくれている。恐らく、魂をすり減らすくらい、破滅的な最後の抵抗だ。人間の小さな魂が、巨大で強大な魂と渡り合うのは自殺と変わらない。

俺は呪文の詠唱に入る前に、息を大きく吸い、氷の板に目玉がついているような顔を睨んで――叫んだ。


「人類を舐めるなよっ!この糞やろう!アンパンマンに出てくる氷の魔王みたいな外見はやめろ!パクリかっ!その外見はデザインとして有り触れすぎていて、全然珍しくないんだよ!

お前はここで死ねっ!友達を全員苦しめて殺したキチガイ野郎!お前は生存競争に負けて消滅するべきだったんだよ!」


「家畜風情がぁぁぁぁぁぁ!僕を馬鹿にするのは許されない事だぁぁぁぁぁ!ブラドの反抗なんぞ無意味だと知れぇぇぇぇぇ!お前だけは念入りに丁寧に、採算度外視で虐待してやるぅぅぅぅ!!」


……正直、長い呪文を詠唱している時間がない。

でも、俺は信じている。人類最強の化け物達を。幾らなんでも、そんなにあっさり全滅しているはずがない……アメリカ海兵隊の皆を信じているっ!


「アメリカの軍事力は世界一ィィィィ!他の国なぞっ!アメリカの周りにそびえ立つ糞でしかないのだぁぁぁぁぁ!」

「撃てぇぇー!ダメージを負わせれば魔族だって倒せるぞぉー!」


通路から、数十人のアメリカ軍の人達が入ってくると同時に一斉攻撃を開始した。この広大な地下施設で警備にあたっていた連中なのだろう。装備は豪勢で、誘導機能つきの弾丸を放つ銃器を持っている。かなり大型で、火炎放射機能もあり、非常に多機能だ。

それが盛大に弾丸を放ち、苦しみの魔王の身体を削っていく。弾丸はザ・ウェポンの魔法で事前に魔力が注入されていて、魂を素通りしない。銃弾に込められた運動エネルギーごと魔王の魂にダメージを与えていく……いや、魔力による壁が展開されて、銃弾の持つ威力の半分くらいが殺されていた。

それでも魔王に着実にダメージを与え、貴重な時間を稼いでくれる。


「邪魔をするなぁぁぁぁ!そんな攻撃で僕を倒せると思うのかぁぁぁぁぁ!」


俺の詠唱が終わるのが先か、苦しみの魔王が俺を黙らせるのが先か。

人生をかけた大博打だ!


「殺戮の魔王にして破壊神。我は汝に生贄を捧げる……」


長い長い詠唱が始まった。



★★★★


(ノ゚ω゚)(ノ゚ω゚)アメリカの皆が踏み台……


(´・ω・`)地下空間じゃから、大きな兵器が入れないのう。ロマンがないのう。


(ノ゚ω゚)(ノ゚ω゚)大型の兵器持ってきたら、空間転移をブラドに妨害されている魔王は死んじゃうだろ!?


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