第520話維摩VS文殊菩薩(3)

文殊菩薩は維摩のいきなりの難問をあっさりとかわす。

「維摩さん、あなたのおっしゃる通りと思いますよ」

「もうすでに、ここには来ているので、来るという話にはなりません」

「それと同じで、ここから去ってしまえば、去るという話にはなりません」

「その理由としては、来るものは来る場所がなく、去るものは何処に去るのか、その目的地がないのです」

「その上で、見るべき真理などは、さらに見えないのです」


例えば、海原と波を考えてみる。

波が岸に寄せるのを、岸辺から見れば、来ると言う。

しかし海原から見れば、岸辺に去って行くのである。

去るについても、岸辺から見れば岸から去って行く。

海から見れば、戻って来るのである。


しかも、波は水なのであって、水本来の変化は何もない。

本来の姿は、見る見ない、去る去らないに関係なく存在しているのであって、一時的は変化などは。仮の姿に過ぎないのである。




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