第19話 リカバー

 俺は、すでにマガジンチェンジを終えて、援護射撃を開始しようとしたが、彼女の顔はこちら側を向いている。

 彼女の後ろ側にいたゴブリンの群れが、隙のできた彼女の背中に殺到した。だが俺の援護射撃は、彼女の体が邪魔になって撃てない。

「後ろだ穂弓っ」

 それに気がついた彼女は、振り返ろうと身体を動かした時、その足元にしがみついたゴブリンに引き倒された。


 くそっ、彼女の元へと移動しながら発砲する。


タタタンタタタンタタタン


 倒れた穂弓さんを覆い尽くす数のゴブリンが殺到する。

 俺の方にも、ゴブリンが走ってきた。

 引き金を引き絞り、フルオート連射で一気に薙ぎ払う。

タタタタタタッタターン

 一瞬でM4A1は、弾切れを起こした。

 穂弓さんの上には、ゴブリンが群がり、倒れた彼女をナタで滅多撃ちにしている。

 彼女に加わる攻撃の圧力で、立ち上がる事もできてない、魔剣を盾にするのがやっとのようだ。

 ゴブリンの中には、叩く度に氷の結晶が出る剣を持ったやつがいて、穂弓さんの金色のカーテンが徐々に削れている。


 マガジンチェンジの時間的余裕はない。

 M4A1を棍棒代わりに振り上げ、全力疾走でゴブリンの群れへと体当たりをした。


「ガアァァアアアァァアア」

ダンッ!…ガガガガッガッ!


 ゴブリンの群れがボウリングのピンのように吹き飛び、壁や床に叩きつけられて転がって呻いている。

 M4A1は、俺の肉体強化された膂力で叩きつけられ、本体とバレルの継ぎ手部分で『く』の字に折れ曲がり、もう使い物にならない。


 中には、体当たりの衝撃で首や、腕がもげて塩に戻っていくゴブリンもいるが、20体を超える数が塩に戻らず、まだ無事なゴブリンが立ち上がって、今度は俺に殺到した。


 肩の鞘から、鎧通しナイフを引き抜き仁王立ちになる。

「ウオオオオオオオ」

 ありったけの力で吠える。


 来るなら来い、やってやる。


 最初にナタを振り上げて突っ込できたゴブリンを蹴飛ばし、その後ろにいたゴブリンの胸へ鎧通しを突き刺す。

 すぐ左から襲い掛かってきたナタの手元を取って、ゴブリンの身体を振り回し、周りのゴブリンを吹き飛ばすと、振り回していたゴブリンを地面に叩きつけ、鎧通しナイフで胸の中心をえぐる。


ガスンッ!


 この時後ろから1頭のゴブリンに背中を切りつけられたが、無視して右に飛ぶ。


 ガスッゴリッ!


 飛んだ先、右から横薙ぎに来たナタの付け根部分を貰いながら、そいつの首元へ鎧通しナイフを叩き込み捻る。


ガツッ


 今度は、俺の左顔面に金色の魔法陣が発光している。左顔面に、ゴブリンのナタが叩き込まれていた。

 転がりながら、もう一度振り下ろされたナタをかい潜り、柔道技の蟹挟みでそいつの両足を刈ると、その隣にいたゴブリンの下腹部を鎧通しで切り裂いて塩に戻す。

 そのままの動きで、蟹挟みで倒したゴブリンの胸をえぐって塩に変え、残りのゴブリンのナタを貰いながら、その姿勢のまま体当たりで吹き飛ばすと、近くに来ていたゴブリンの脳天から鎧通しを突き立てた。


 肺胞が酸素を求めて、気道がゼエゼエ鳴る。


 周りを見る。立っているゴブリンはいない。

 立っているゴブリンは周りにいなかったが、まだ息のあるゴブリンが数頭倒れている。


 穂弓さんは?


「大丈夫か?」

 彼女は、倒れたままだが、手を降って答えてる。

 大丈夫、意識は有るようだ。

「穂弓、予備マガジン…をよこせ」


 彼女は、自分の予備マガジンを抜いて俺に投げる。

 USP45予備マガジンを受取り、ポケットに仕舞っていたUSP45にマガジンを叩き込む。

ジャキッ、パシャッ

 装弾動作の途中、すぐ近くで起き上がろうとしたゴブリンの頭を踏み潰す。

 USP45が発射可能になる。


ババンババンババンババンババンバーン


 少数だけ残って、まだ動いてるゴブリンの頭へ、2発づつ弾丸を撃ち込んでいく。

 この銃に祝福はかかっていないが、ゴブリンの頭蓋を破壊するには十分な物理攻撃力があった。


 周囲を確認する。

 見えている範囲に、塩に戻らず原型を保っているゴブリンはいない。

 穂弓さんは、倒れたままだが、起き上がろうとしてるので無事のようだった。


「ゼッゼッゼッゼ、お、終わったのか? 」

 まず自分のダメージの確認をしておかないと。


HP:6286/6414(+6400)

MP:3102/6412(+6400)

経験値    128 ※レベルアップ×12回 ※レベルアップと唱えて項目を選んでくだちゃいでちゅ

所持金   128000円


 ゴブリンのナタを覚えているだけで、4~5回食らっていたが、HPは30近く減っていた。体当たりの衝撃を含めても結構厳しかったな。



「……ふっふぅっ……あー、疲れた」

 ……

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