第17話 不仲
彼女と一緒に移動を再開して少し進むと、狭かった道が変化した。
立ち止まって索敵をすると、曲がりくねった道の先に、大きな空間が有るのを索敵マップに確認できる。
空間の周囲には、まるでアリの巣のような部屋がいくつも見えている。
その一つ一つの部屋に赤い点が5~6体有った。
全部の部屋に赤い点があるのか、これが一度に襲い掛かってくると厄介そうだな。
俺は、シモベの群れが居ることを穂弓さんに伝えた。
「この先に大きな空間があり、空間の周りを取り囲むように幾つもの少部屋が見えます。全部の部屋に5~6体の赤い点が光っているので、見えた範囲だけで100体を超えるシモベがいるようですが、一度戻ってミズキさん達と再合流しませんか?」
穂弓さんは、少し考え込んでいる。
「見つけた、
「オドリバ? えっ、いや、2人だけで行くつもりですか? ちょっ、準備をするので待ってください」
彼女は、このまま進む事を決めたが、良いのか?
下手をすれば、敵地のど真ん中で囲まれて、一斉に攻撃を受ける事になれば、いくら彼女の魔剣の能力が高くても、追いつかないぞ。
……ヤバそうだ。
魔弾のガバメントは、早めに
ガバメントを、右の太腿のホルスターに戻し、M4A1を装備し直す。
多数の敵を相手に戦う事を考えていたら、今の状況はかなり厳しい。
「穂弓さん、準備できました……それで、中に入ってからの打ち合わせだけど」
「行くわよ」
こちらからの打ち合わせの提案を無視された。
またお互いの連携の打ち合わせ無しか……
「は……」
彼女に従って「はい」と言えば、彼女の機嫌をこれ以上損なうことは無いかもしれいない。
が、ダメだ。
このままでは、やっぱり危ない。1つの部屋に閉じ込められて、入り口を突破されたら、逃げ道を失う。
数の暴力は、無視できない。
自由に移動ができる開けた場所では、M4A1の強力な弾幕も全方位から殺到されると、あっと言う間に弾切れになって接近を許すだろう。
少なくとも、マガジン交換を行える時間を稼げる程度の距離を取る必要がある。
聞いてもらえないかもしれないが、作戦の提案をしよう。
「いや、待ってもらえますか。2人で1つの部屋に飛び込むのではなく、1人は退路を確保するよう、通路に残し、今居るここで戦いませんか?」
ジロッ
無言の彼女に睨まれたが、引き下がる訳にはいかない。
「敵の数は、我々よりずっと多いです。退路の確保をして戦いましょう。なんなら俺が手前の部屋に突入して騒ぎを起こして敵を釣り出します。その間に穂弓さんは、通路上で魔剣を構えて陣を張っていてください。俺もすぐに走って戻ってきますから」
「勝手にすれば? 私も勝手に行くわ」
「え?」
穂弓さんは、自分の剣を浮遊させると、そのままスタスタと、一番手前の部屋へと歩いていった。
くそっ、何なんだよこいつ。
どうする?
思考を高速回転させて、事後策を考える。
とにかく退路の確保は絶対だ。
今俺が居る場所を確保しつつ、穂弓さんが部屋に追い詰められるのは防がないといけない。
1人突出して出ていった穂弓さんを孤立させず、俺がいる場所まで戻ってこれるよう弾幕を張り、援護射撃をするしかない。
そんな事を考えていたら、穂弓さんは、20m程向こうに見える広い空間へと1人で入って行った。
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