この世が滅ぶことを誰よりも願っている。
@asuna_iori
第一話_いつから
―――死にたい。
いつからか、わたしはこんなことをよく言うようになった。
いつだって、自分が周りからどう見られているか、どう思われているかが気になってしまう。
周りのみんなを疑ってるわけじゃない。
でも、どうしても思ってしまうのだ。
―――こんなこと思い出したのは、いつからだっけ。
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悠姫 美結、小学校三年生。
わたしには、父親がいなかった。
わたしが幼いころに、母と離婚してしまったのだ。
離婚してからも何回か会っていた気がするけど、もう顔すら思い出せない。
だから、わたしの家族は母の紗里と、三つ年上の姉の亜矢、そして祖父母だけだった。
その頃のわたしたちは祖父母の家に住んでいた。
祖父の時彦は優しく、時に厳しい人だった。
祖母の文枝はいつでも優しかった。
母は祖父に似て、どちらかというと厳しい人で、姉とはよく喧嘩していたけど、一緒に遊ぶときはとても楽しかった。
その生活に、不満なんてなかった。
―――なのに。
ある日、お母さんがわたしとお姉ちゃんに言ってきた。
「会社の人と一緒に買い物に行かない?」
わたしとお姉ちゃんはどちらかというとインドア派だったから、あまり乗り気じゃなかったけど、どうやらその会社の人がわたしたちに会いたいと言っているらしい。
しかたなく、わたしたちは家を出た。
しばらく歩くとコインパーキングがあって、そこに停まっている黒い車のそばに黒い服を着た男の人が立っていた。
お母さんはその男の人に近づいた。
わたしたちがお母さんの後ろから近づくと、男の人は「こんにちは、はじめまして。松島 敏夫です」と言ってきた。
ああ、この人が会社の人か、と思った。
お姉ちゃんが「はじめまして、亜矢です」と言ったので、わたしも「美結です」と言った。
それから、お母さんが松島さんのことは「敏夫くん」と呼ぶように、と言った。
敏夫くんはいろいろなところに連れて行ってくれた。
ショッピングモールで洋服を買ってくれたり、
ゲームセンターでお菓子をとってくれたり、
遊園地にも行った。
お姉ちゃんはやっぱり外出するのが嫌みたいで、わたしとお母さんが敏夫くんと出かけると言っても、ついてこないことが多かった。
だからわたしとお母さんだけで敏夫くんと出かけた。
ときには敏夫くんの家に泊まりに行ったりもした。
敏夫くんの家は小さなアパートの一室だった。
泊まるときは夜ご飯をごちそうになったんだけど、ちょっと変わったホワイトシチューだった。
聞くと、敏夫くんは『ブラジルで生まれた日本人』らしい。
そうしてわたしは気づいた。
この二人・・・『付き合ってるんだ』と。
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・・・そうだ。
このころから、わたしの地獄は始まったのだ。
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