第46話 勝利への跳躍
顔の近くを鋭利な爪が通り過ぎていく。間一髪、後ろに跳んだことで避けたミィナは口笛を吹く。
深追いはしない。そもそも、
見極めろ、生と死の境目を。高ぶる心を理性で制御しつつ、機を見て戦士としての本能を解放しろ。
生き残れ。アゼルが言ったように。それこそが、勝利への道だ。
ミィナは岩場を盾に、
獣はその爪で、顔の近くのそれを
獣は叫ぶ。その声は、ミィナが初めて聞いたものだ。彼女はにやりと口端を
「効いてきた、効いてきた」
動きも、
これは好機だ。
ミィナは一歩踏み出そうとして、がくっと膝が悲鳴をあげたのを感じた。彼女は少し慌てた様子で、
幸運なことに、体に刺さった矢を抜こうとしていてミィナには気づいていないようだ。ふぅ、と小さく彼女は息を吐く。
「まいったな。もうちょっともってよ、あたしの体」
繰り返す全力疾走と全開の回避。そして、岩から岩への跳躍。人間相手にはしない動きが、ミィナの体から容赦なく力を奪っていったのだ。
そして、彼女の鋼の精神も、未知の相手に対しての緊張ですり減っていた。一歩間違えれば切り裂かれ、砕かれる。死への恐怖は薄くとも、現実の脅威は確実に彼女の心をむしばんでいた。
「は、かっこわるい」
力強く、
「こんなんじゃ、『楽園』で待ってる叔父貴の顔が見れないっての」
叔父、オルドー。父、リチィオ。彼らから受け継いだ誇り高きアルテの血をひくのは、このミィナレア・アルテ・ロンドルだ。
戦士として任せられた舞台で、まだ手にする
「それに、アゼルにだってバカにされるしね」
おそらく今頃、たった一人で
そして、ミィナは駆けだした。再び、死の恐怖が踊る舞台で舞うために。
ミィナが放つ
強さはそのまま、しかし、明らかに鈍い。
自分の動きも遅くなっているのだ。それも計算に入れねば、一瞬でこの優位は消え去ってしまう。
手放してはいけない。せっかく、ここまできたんだ。最後まで、油断はしない。
目の前に再び矢が降り注ぐ。ぶすりと肉に刺さる音がミィナにも聞こえた。痛みで叫ぶ
そして、ついに。獣は己の
「今だ!」
そこに立ったミィナは、この戦いで初めて
――文献ではあの目に刃を突き刺した時、ようやく獣は絶命したとあった。
最初から狙いは一つだった。しかし、あの巨体と暴風雨のような爪を相手に、どう
ミィナの下した決断は、いたってシンプルだ。高いところから、跳べば良い。
「いくよっ!」
全体重を乗せ、狙い通り、それは獣の金色の眼球を貫いた。
この世のものとは思えぬ、世界を震わす絶叫が響く。
それどころか、獣の頭へと足をつけ、さらに深く
ここまできたんだ。負けてなるものか。
やがて、巨獣はその動きを止める。
ようやく訪れた静寂の後、地響きをたてて
ミィナはその声を背に受け、もつれる足で地に立った。そして、貫いた目から
肩で息をする。消耗は激しい。気を抜けば、自分も前に倒れてしまう。
ミィナは
「まだ、終わってない」
静寂を取り戻した採石場。だからこそ、まだ続いている戦場の気配を感じられる。
ミィナは
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