第54話 猛毒な俺

 人形作りを再開しよう。


 この人形には面倒な命令プログラミングが必要となってくるために紙作りを優先した。

 その人形とは地図作成人形である。


 この人形は4体作ることになる。


 この内の3体は測量人形。歩幅と歩数で距離を。3体の位置で三角点を作り三角測量をする。その三角点には平面の角度も当然ながら垂直の角度も算出する。

 算出方法はsin・cos・tan。そう三角関数。高校生の時には三角関数なんて俺の一生で使うことはないと思ってた。なのであまり身を入れず苦手意識が克服できずに文系に進んだ。それが必要になるなんて……。


 A地点とB地点、C地点の3体を測量点を作り距離から角度を算出する。高度はA地点とB地点の見上げる(見下げる)角度と距離から算出する。それを残りの1体の人形が記述していく。


 測量ポイントは目印になるような、岩、大木、川などを目標物にしていくのだが、この目標物の定義がまず難しい。人の目には目標物になりそうだなと、すぐに考えられるが、人形にはその区別がつきづらい。また、崖のポイント取りも難しい。登れなくなる手前で止まればいいのに、登ろうとする。ずり下がってっているのに止まらない。その分も距離にカウントされるので測量結果がとんでもないことになる。様々なことを想定して命令プログラミングしていくと書いても書いても止まらない。


 そんなこんなで完成した。破損や損失した場合にも対応できるようにスペアも2体置いておく。これを始動させ村がある方向に向けて測量を開始させる。

 直線的に村に辿り着けるように期待したい。



 次に自衛手段を増やす。


 現在家は要塞化しているが、入口に続く道には、弓矢人形が2体あるだけだ。これは自動防御ではなく俺の命令で動くようになっている。友好的な人間や俺の作った人形が勝手に射られると困るからだ。


 まあ、未だに有効的な人間はいませんけども。


 それに俺が追ってきたやつが悪い奴で一方的に殺して良いってことはないだ

ろう。


 そこでゲリラ部隊を作ることにした。

 まず、弓矢では威力が強すぎるし、移動も不便なので吹き矢にすることにした。


 ここでエバを作った時の経験が生きる。


 一度エバに声帯を作り声を出そうとした。声帯を上手く作ることが出来ずに断念したが、呼吸を出来るようにはした。牛皮で袋を作り、それを圧迫して空気を放出するのだ。それを応用し、吹き矢を飛ばせるようにする。

 

 次に吹き矢。

 筒は大きめに作った和紙を重ねて1mの筒にする。そして内外に漆を塗ってコーテングする。

 矢は竹を尖らせて作る。先端には毒を塗る。


 毒はね……。


 川にね。カラフルな小さな小さなカエルさんが居たんですよ。触ったらモーレツな痛みがあったカエルが。

 すぐに洗ったから問題なかったんだけど。

 試しにカラフルなカエルさんを集めてすり潰して矢に塗って狩りをしてみたら掠っただけでコロコロ鹿さん達が倒れるんだよね。呼吸困難だか心不全みたいな感じで。すぐには死なないよ? 5〜6分経ってからパタッと逝くようだね。

 

 それと、家から山に登って行くと牛を飼っている牧場? があるけど、どうやらそこで昔、芥子ケシを密栽培をしていたようなのね。だからあの平原が拓かれているんだと納得できたんだけど、そこに芥子が残って自生しているのを発見したんだ。


 芥子を傷つけると白い液体が出てくるのでそれを採取して乾燥してと……。

 乾燥すると黒っぽい塊になって……。


 それらを混ぜて矢に塗ると、あらビックリ毒矢ができちゃう。


 実際にはちょっと矢に塗っただけでは死ぬわけでは無い。鹿で実験してみたが、即効性があるわけでもなく10分ぐらいかけてジワジワと行動不能に陥る。一日経てば復活するしまあ問題ないよね。人間に使っても。



 その吹き矢をもたせたゲリラ人形を家近くの木の上や、道の近くに穴を掘ってそこに潜ませている。


 なにせ人形だから飲まず食わずで動いてくれるからいいよね。たまにカビてるやつがいるけど。



 他に家周囲のブービートラップを仕掛けている警戒地域を囲うように生垣を植え始めた。

 生垣は直径2〜3cm程度の小さい南瓜のような赤い実が生る低木。実は熟すと甘く食べれる。樵人形を引き連れ群生しているところから株を引っこ抜き植えた。

 食べれる事こそ重要。

 どんどん種がなり、どんどん増えていくので生垣には適してるんじゃないかな。



 それと葡萄の様な実がなっている低木。


 ツル性ではないので葡萄ではないことは確かだが、何かは知らない。知っているのは食べれること。熟すと黒紫色になる。

 このまま食べると渋くすっぱいので食いづらい。この実を見つけた当初、「ブドウだ!」と思って家に持って帰ったんだが、まあ旨くない。渋で口が痺れるほど。鳥が食っていたので毒じゃないだろうとは思ったが、気落ちして袋ごと放り投げたらちょうど風呂にハマってしまった。明くる日取り出してみたら、渋が抜けていて美味しくいただけた。偶然が成功を呼びこむってことだね。


 あとはウコギは低木で刺がある。そして重要なのが新芽を食べられる

 。それほど美味しいものではないが非常用にはちょうどいい。探索中に見知った葉っぱを見て思い出した。母親の実家の知合いが米沢の人間で「この生垣は食べられるんだぜ」と自慢していたのだ。

 なぜ熱帯地方っぽいこの場所に生えているかは知らない。


 これらを塀の門に至る道の両側や警戒地域、畑の周囲に植え巡らせる予定である。そこの中にゲリラ人形を配備し隠れ潜ませる。


――この隠れ潜ませるって言葉がすでにぼっち体質を如実に表しているような気がする。


 このゲリラ人形は俺の合図があり次第、一斉攻撃する。まあ、俺の近くにいる奴ら全員に攻撃しちゃうけど。

 イマイチ敵味方認識方法が思いつかない。


――まあぼっちだから関係ないけどね。

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