第50話 エンカウントな俺

 帰りは行きと一緒で廃村が見渡せる高台にキャンプした。

 何も起こらず一泊し、そのまま街道へ至る。



 異変は帰り道で起きた。


 道端で一休みをしていた時、前方から馬の足音が複数聞こえてきた。慌ててエバとドナドナを茂みへと隠し、俺も隠れようとした所に見つかってしまった。


 人とエンカウントしすぎ。これまでの約3年間は何だったんだ。


「そこのお前。止まれ! 」


 馬に乗った人物が俺に問いかける。

 視線を合わせないようにその男を見る。

 皮革で作ったような鎧と尖った兜を被り、手槍を携えた完全装備の騎兵さん達4名様御一行がいらっしゃっる。


「……何か御用でしょうか」


 この場合の立ち振舞が分からないので、如才ない感じで受け答える。


「ここで何しておる」


 兜のおっさんが悪い目つきで俺を睨みつける。


「旅の者でございます。ここで一休みをしておりました」


俺は当たり障りのない返答に終始する。


「お前の様な年の頃の奴がなぜこんなところでウロウロしている。教会に従事してなければならんはずだぞ?」


「……お宅様はどちら様で御座いましょうか」


「我らはラタール教第二教区第2軽騎隊隊長のマフムードだ。返答次第では教会に連行しなければならん」


 う〜ん。厄介なことになりましたね。

 もともとこの世界でのぼっちの境遇は神父に死ねって言われたからだしな。

 連行されたら最後、俺はこの世からいなくなってしまうかも。この世では無いところから来たのに。

 嘘八百言って誤魔化すしかないな。


「私は両親とともに旅をしているものです。両親とはぐれてしまったのです。

 マフムード様が来られた方にはそういったものは居りましたでしょうか?」


「いや、街からこのかた人影は見ておらん」


 ギロッと擬音語がなりそうに俺を睨みるけてくる。恐ろしい。


「左様ですか。目的地はこの先の街ですから先についているのかもしれません。

 では急ぎますので失礼して」


 では、ちょっくら小走りにいなくなりましょうかね。


「待て! 話は終わっておらん」


 まあ、そうですよね。


「次の街で必ず教会におとなうように。貴様の両親に伝えておけ。次に彷徨っているのを見たら強制連行するぞ」


「畏まりました」


 ふう。なんとか誤魔化したな。

 エバ達は後でピックアップするとして早く立ち去らないと。


「ちょっと待て」


 マムフードが呼び止める。


 歩み出すと同時に声を掛けられ思わずドキッとする。

 もしかしたらドナドナを見られたかな?


「小僧。名前は? 」


「……シンゴと申します」


「その頭はどうした? 」


俺の禿頭を見てマムフードが聞いてくる。


「はい。幼少のときに熱を発して髪の毛が伸びないようです」


「ふん。若禿げはみっともないな」


 そう言うとマムフードが馬を両足で締め付け走りださせた。


 ……俺は若禿げじゃねえつうの。ただ単純に髪の毛を有効利用しているだけ。毛が生える過渡期にあるだけだっつうの。


 居なくなったのを見計らってエバたちを引っ張りだして家路に急ごうと準備をするが、少し遠くでゴソゴソと話をしているのが聞こえる。

 野生児な育ちのためか耳が良くなっているようだ。


 鹿も騙せる隠密行動でこっそりと近づくと騎士団の声がはっきり聞こえてくる。


 騎士たちが馬に跨り話をしているようだ。


「……マムフード卿……致した?」

「……怪しいな。お前……追い身元を洗え。場合に寄っては……に報告……」


一人の騎士が返事をし、元きた道を引き返していった。

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