【第128話:その名は?】
結局パズの思い通りになって飼う事になってしまったケルベロス。
この世界で魔物を飼う場合は従魔登録が義務付けられているので、冒険者ギルドにてケルベロスの登録を行わないといけない。
しかし、この獣人の村には冒険者ギルドがなく従魔登録できないので、翌日、オレはリリルとパズとケルベロスの二人と二匹でポルクスの街まで来ていた。
ズックも連れて来てあげたかったのだが『導きの光』がサルジ皇子の回復に効果があったので自ら残ると言ってきた。
ズックは良い子だ。
まぁそのおかげでオマケはいるがちょっとリリルとデートっぽくて嬉しいのは内緒だったりする。
「ぶぅわぅ」
内緒だったりするのだが、
「……悪かった……オマケじゃないから頭に噛み付くのやめてくれないかな……」
オレの頭に齧りついているパズは相変わらずこういう思考にはするどい……。
「ユウトさんとパズくんはホント仲良いですよね〜」
リリルが何か暖かい目で話しかけてくるが、実はもう出血してるんじゃないかと思うぐらい痛いんですが。
そんなどうでも良いような、でも実は結構切実なやり取りをしながら、そしてパズに頭を齧られながら冒険者ギルドに向かっていた。
ちなみに、当のケルベロスは体を小さくしてもらっているので町にはすんなり入れて、仮の従魔の証をつけてもらって嬉しそうに尻尾をふりながら後ろを付いてきている。
(この子が地獄の門番と恐れられている魔物だなんて誰も思わないだろうな……)
そしてこれからの手続きの事をリリルと話していたのだが、冒険者ギルドが見えてきたところで立ち止まり、
「……なぁパズ。ところで『ケルベロス』の名前はつけてやったのか?」
オレはそう言えば獣魔登録をする時に名前を申請しないといけない事を思い出して聞いてみる。
「ばう!」
(あ。ようやく頭から離れてくれた……)
「……って!? え?オレが決めるの?それにケルベロスはオレが決めちゃって良いのか?」
「ガゥ!」
パズがオレが決めてと伝えてきたのでケルベロスにも聞いてみるのだがお願いされてしまった。
ちなみにケルベロスとはパズみたいに細かいところまでは話せないが、キントキと同程度には意思疎通出来るようだった。
なので、こうして普通に会話しているのだが、きっと知らない人が見たら少し痛い人に見えるかもしれない。気を付けよう……。
「しかし急に言われてもなぁ。」
オレは慌てて考え始めるが中々良い名前が浮かばなかった。
「ん~~~中々いい名前が思い浮かばないなぁ……ケルベロスだから……ケルル、ケロ……なんかちょっとカエルみたいだよなぁ。そうだリリルも一緒に考えてよ」
中々良い名前が浮かばなかったのでリリルにもお願いしてみる。
「え?私ですか?えっと……私は、今のケルルとか結構好きですけど……、」
と、リリルはそこまで話してから急に顔をすぐ側まで近づけてきて、耳元で
「そもそもこの子は男の子なんですか?それとも女の子なんですか?」
と小声で聞いてきた。
ちょっとドキッとしたのは内緒だ……。
「……あ……えっと……」
しかし、そう言えば聞いてなかった……。
(パズ!ごめん!どっちなんだ?)
オレは直接は少し聞きにくかったので、あわててパズに頭の中で聞いてみると、高位の存在だから男も女もないと返ってくる。
そして続けて、まぁでも性格はやんちゃな男の子っぽいから男の子の名前で良いんじゃない と伝えてきた。
(さんきゅーパズ!)
とオレはフォローしてくれたお礼をパズに伝え、
「性別はないみたいだけど、性格は男の子っぽいらしいよ」
とリリルに小声で教える。
「そうなんですね!?でも、男の子の名前……あ。例えばユニセックスな名前でケリーとかどうですか?」
ユニセックスな名前とは男の子にも女の子にも使えるような名前だ。
確かにそれは良いと思い、
「その名前良いね!ケルベロスのケの字も入っているし、ケリーって凄く良いんじゃないかな!」
そしてオレは少し遅れて物珍しそうに周りをキョロキョロ見ながらついてきていたケルベロスに近寄る。
そして目の前でしゃがみ込み、
「なぁ、名前だけど『ケリー』って言うのはどうだ?」
と聞いてみると、
「ガゥ!」
と、とても嬉しそうに前足をあげて立ち上がりながら喜んだ。
遅れて近づいてきたリリルとパズも名前が決まってなんだか嬉しそうだ。
「良し!じゃぁ今日からおまえはケリー、ケルベロスのケリーだ!よろしくな!」
「気に入ってくれたみたいですね。ケリーくん、これからよろしくね」
「ばぅ♪」
こうしてオレ達『暁の刻』に新しい仲間が加わったのだった。
……。
……まぁ……、
この後、従魔登録の申請書類に『ケルベロス』と書いた事で大騒動になったのだが……。
「ガオォォォン!」
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