【第53話:使命】

「「か、畏まりました!」」


 と言って、二人は感動に打ち震えながら跪く。

 だがオレは、


(えっと…、これはオレも跪いたほうが良いのかな…)


 とか考えていた。

 すると、


≪優斗…。阻止するのだ!…ですよ…≫


 とセリミナ様がジト目で見つめてきたのであわてて跪いてハハーッとするのだった。

 ~

 そしてオレ達はいくつかセリミナ様から闇の眷属についての情報を教えて貰う。


 今回は闇の眷属でも上位のものが絡んでいるらしく、かなり厄介らしい。

 その強さは小さな街なら一人で壊滅に追い込めるほどだそうで、そんな強い闇の眷属にはもちろん手下もたくさんいるという話だ。

 闇の眷属以外にもドリスさんが所属していた闇の眷属を崇拝している組織が本格的に動き出していて、今回は多数の構成員が暗躍している。

 そして今は古の民の集落から少し離れた山奥に戦力を集めているようで、移動を開始する前に叩くのがお薦めという事だった。


「わかりました。明日にでもその戦力をつぶしに向かいます」


 と、少し真面目に答えると、セリミナ様も


≪優斗、頼みましたよ。あなたとパズにはその力があるはずでしゅ≫


 と言って、光と共に消えていくのだった。


(噛んだの無かった事にして消えてったな…)


 ~

 オレが次から次へと起こる出来事に少しげんなりしていると、


「す、凄かったでござる!!感動したでござる!」

「わ、私も緊張しちゃった~!」


 と、わーきゃー騒いでいる二人がいた…。

 まぁこの世界の人間である二人に取っては伝説上の存在であるいにしえの神と会い、更には使命なるものを授かったのだからこの興奮も仕方なかっただろう。

 ただ、女神様の『素』を知っているオレは何か納得のいかないものを感じるのだった…。

 ~

 ようやく落ち着きを取り戻した二人とこれからの予定を相談する。


「やっと落ち着いてくれたな。さて…、これからどうしようかな?」


 とオレが話し始めると、


「さすがユウト殿でござる。使徒はこういう事に慣れているので平静でござるな!」


 と何か勘違いしてうんうんと納得していた。

 このままでは話が進まなそうなので、まずはオレの考えを話すことにした。


「えっと、まずは朝一でロイ様と冒険者ギルドあたりに報告しよう。そして有志を募ってもらって対抗する準備を進めてもらう。あとは遠慮して宿に泊まったメアリを見つけてエルフの里に急いで連絡してもらおう」


 その他にも集結している場所の確認と、そこまでの移動の準備、超遠隔からの魔法による襲撃を繰り返す作戦などを話し合ってその日はお開きとなったのだった。


 ~


 翌朝、夜明けとともに目を覚ましたオレは、まだ寝ているパズを小脇に抱えてリリル達の部屋に向かう。


(しかし…、ハイスペックボディのおかげでオレ達は最悪寝ないでも大丈夫みたいなのに、本当によく寝るよな…)


 と、小脇のパズを眺めて苦笑する。

 女神様が降臨するまでは横に控えていて殊勝な態度を取っていたのに、話の途中でバレないように眠ってしまっていたのには驚いた。


(あれってセリミナ様も気づいてなかった気がするんだが…)


 と、どうでも良い事を考えていると、リリル達の部屋の前にたどり着くのだった。

 ~

 部屋の扉をノックをすると中から、


「きゃっ!ちょ、ちょっと待ってくださいね!」


 とリリルの声が聞こえてくる。

 ちょっとドキドキしてしまったのは内緒にして、


「わ、わかった。開けてくれるまで待ってるから大丈夫だよ」


 と答えるのだが、


 ガチャ!


 と、ドアが開かれる。


「おはようございます。ユウトさん…」


 と、寝ぼけたメイが扉を開けちゃうのだった。

 ござる調でもなく完全にキャラがまだ寝てしまっているメイ…。


「うぁぁ! メイ!?まだ開けちゃダメなんじゃ!?」


 そして中から悲鳴が悲鳴が聞こえ、衛兵まで飛んできて朝からひと騒動起こるのだった。


 ちなみにドアに背を向けていたので断じて何も見ていないのは報告しておく…。


 ~


 結局、ロイ様とも一緒に朝食をとる事になったのであわせて報告することにする。


「なんと!?それは大事ではないか!?本当なのか!?しかし、そのような情報をどうやって…」


 と、ロイ様が驚き、本当なのかと確認してくる。


「本当でござる!僕らが加護を受けている女神様にお告げを頂いたでござる!」


 と、キャラ復活したメイがこたえる。


「加護持ちのあなた達の聞いたお告げですか…。それは信用するしかなさそうですね…」


 出来れば嘘であって欲しかったと、覚悟を決めた表情になるロイ様。


「これから私たちは連れのメアリを探してエルフの里への連絡を頼んだら、準備をして今日中にはここをたつつもりです」


 しばらく滞在するといったのに申し訳ありませんと続ける。


「ここは私たちで何とかするから気にしないで欲しい。女神様のお告げを優先させてくれ。…ただ、有志を募ったとしてどこに配置するかが悩ましいな」


 と、お告げを優先して動いて欲しいと言ってくる。

 そして有志を引き続きこの街の防衛に回すのか、エルフの里の応援に向かわせるのか、はたまたオレ達について行かせるのか悩んでいるようだった。

 オレは少し考えると、


「オレ達はとりあえず遊撃を繰り返して数を減らす作戦なので不要です。ですから応援に来てくれていたエルフと一部の冒険者は里に向かってもらい、残りの方は引き続きここの守りを固めてもらってはどうでしょう?」


 と提案してみる。


「君たちだけで大丈夫なのか?いや…昨日の報告を聞く限りでは下手な者をついて行かさせても足手纏いになりそうだな…」


 と言ってオレの提案を受け入れるのだった。

 ~

 領主の屋敷から出たオレ達は、メアリが泊まっている宿に向かっていた。

 昨日聞いた話ではその宿は門を入ってすぐの所にあるようなので、保存食と外で寝る時に使う道具などを買ってから向かう予定だ。

 街は昨日の襲撃を乗り切った事で朝早くから活気に包まれており、屋台からは良い匂いが漂っていた。


「ばうぅぅ!」

「がぅがぅ」


 と、約二名がよだれを垂らしそうになっていたので、色々買い食いしながら保存食を買い込んでいく。

 途中、メイがパズの食いっぷりを見て、


「パズ殿はその小さな体のどこにさっきの大量の串焼きが入っていっているのでござるか…」


 と呟いていた。


(本当にどうなっているんだ…。今度見極めし者で確認してみようか)


 などと考えていたのは内緒だ。


 そして宿の近くまでやって来た時、ちょうど街に入ろうとしていたユリ・コルムス様一行と再会するのだった。

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